工場勤めに嫌気がさした主人公がヴェニスに逃げ出し、そのヴェニスで気ままな時間を過ごしたことで癒されるストーリィ、という説明に期待して観たのですが、そんな期待とはちょっと異なる作品。
大衆受けするアメリカ映画ばかり見ていると、たまにヨーロッパ映画を見て戸惑うところがあります。つまり、どこが面白いのか判らない、ということ。
本作品もまさにそう。主人公となる冴えない中年男ヴァンサンは、絵が好きらしいが、毎日鬱屈した気持ちで工場で働いている。家庭内も無味乾燥のようで、息子2人からも疎まれている様子。
そんなヴァンサンが、父親の勧めもあって、家族に無断で出奔し、ヴェニスへ行く。そこで開放感を味わう、というストーリィ。
作品中ヴェニスでの時間が長いものと思っていましたが、そんなことはなく僅か2日程度、画面での時間もそう長くない。
ヴェニスで知り合い、意気投合してヴェニス人のカルロも、日常時間に戻ってみればヴァンサンと同じように工場勤めの労働者。しかし、ヴェニスからヴァンサンが戻った後の家族内の様子は、ちょっと変わったらしい。
本映画の舞台は、フランスの片田舎と世界に冠たる観光地ヴェニス。そのヴェニスも、本作品では薄汚いところも目立つ場所。しかし、ヴァンサンからみれば、日常から離れた場所で開放感をたっぷり味わえる場所。そのヴァンサンの気持ちは共感できます。
淡々と主人公たちの日常生活が描かれるだけで、とくに見せ場もないストーリィですが、唯一楽しめるのはグルジア出身の監督イオセリアーニ自身が演じるイタリアの侯爵の登場場面。友人の息子であるヴァンサンの前で、格好付けするシーンは巧妙で楽しめます。
※本作品は、2002年ベルリン国際映画祭・銀熊賞(監督賞)および国際批評家連盟賞受賞作品。
2004.06.20
|