黒澤明監督の名作「生きる」を、イギリスを舞台にリメイク。
1953年のロンドン、役所の市民課に勤務する課長のウィリアムズは、典型的な英国紳士。
いかにも英国紳士らしく、また役所の人間らしく、決まり切った仕事を真面目に規則正しくこなしている日々。
そんなある日、診察を受けた医師から、病気はがんで余命半年と宣告されてしまう。
息子に打ち明けなくてはと思うのですが、息子夫婦とは気持ちがすれ違っていて打ち明ける機会を見つけられないままとなる。
このままでは死にたくない、残された日々の中で、何か、生きたと思える行動をしたいと、役所を無断欠席して彷徨する始末。
そして、元部下でカフェの副店長に転職するといって役所を辞めていった若い女性マーガレットとの再会から、主人公は少しずつ変わっていく。
そして、役所の各課からたらい回しされ続けている女性3人の公園建設にかかる陳情にきちんと向かい合い、直ちに行動し始める。
黒澤明監督の原作は名作という評判を聞きつつも、一部の場面を観たことがある程度の知識しかなく比較はできませんが、本作、極めて地味なストーリィ。
それでも、地味だからこそ深い味わいを感じることができる、そんな作品です。
度重なる元上司からの誘いに、老いらくの恋かと困惑する若い女性マーガレットと、初老の主人公ウィリアムズとのやり取りがとても良い。
主演のビル・ナイについては言うまでもなく、マーガレット役エイミー・ルー・ウッドの好演が光ります。
堅苦しい役所の中で、いつも明るさを絶やさなかったという彼女に、希望の芽を見出そうとする主人公の気持ち、よく判るなぁ。
生きるとはどういうことなのだろう、と考えさせられるストーリィ。
お薦めです。
2023.04.08
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