“リトル・ヴォイス” ★★☆
LITTLE VOICE
(1998年イギリス映画)

監督:マーク・ハーマン
原作戯曲:ジム・カートライト
脚本:マーク・ハーマン、ジム・カートライト

出演:ジェーン・ホロックス、ユアン・マクレガー、ブレンダ・ブレシン、マイケル・ケイン

 

けばけばしく騒々しい母親と対照的に無口な娘、その内向的な少女の巣立ちを描く感動的なストーリィ。
大ヒットしたミュージカルを映画化した作品とのことです。

いい歳をしながら未だに色気をふりまいて男をつかみとろうとしている母親。その母親の狂態から耳をふさぐように家に閉じこもり、死んだ父親の遺したレコードを繰り返し聞く少女LV(エルヴィー)。
このLVという呼び名は、亡き亭主に似て無口な娘への蔑称なのです。つまり、かぼそい声しかださない娘への八つ当たり。
そのLVは、いつしかレコードの歌手そっくりに歌うという才能を身につけていた。ジュディ・ガーランド、マリリン・モンロー等々、誰しも喜んで聞きたくなるような往年の歌声です。そのLVの才能に目をつけ、スターとして売り出そうとしたのが、母親の情人で自称プロモーターのレイ・セイ。嫌がるLVに、亡き父親も喜ぶ筈と説得し、1度だけの舞台を承諾させます。
亡き父親の姿を客席に見出したLVはその才能を思う存分繰り広げて見事なステージを成し遂げ、拍手喝采を浴びますが、LVの思いを無視して金儲けの計画は進められていく・・・。

舞台でも主役を演じたジェイン・ホロックスが、とにかく見応えあります。ステージの上でノリノリに歌いまくる場面は、圧巻。
また、醜悪にもいまだ自分の性的魅力があると信じ込んでいる母親マリーを演じるブレンダ・ブレシンの体当たり演技、自暴自棄になってステージで自嘲して歌うレイを演じたマイケル・ケインも、ジェイン・ホロックスに勝るとも劣らず見応えがあります。
唯一、LVと心を通わせる鳩好きの青年ビリーを演じる、ユアン・マグレガーも好ましい。

追い詰められたLVが母親に溜めに溜めていた怒りをぶつけ、自分の名前はローラであると主張し、漸くくびきから放たれた姿を見せるエンディングには、静かな感動を覚えます。
映画としては地味な作品かもしれませんが、俳優たちの演技力があってこそ成り立つ、こうした感動的なストーリィは、まさに私好みです。

2005.02.06

      


  

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