“シネマチックな恋人”★★☆
JUST WRITE
(アメリカ映画)

監督:アンドリュー・ガッレラーニ
脚本:グスタン・ウィリアムソン
出演:シュリリン・フェン、ジェレミー・ピヴェン

 

ハリウッド・ツァーバスの運転手と美人女優のロマンテック・コメディというのが本作品の紹介文。
新しい脚本に納得できない人気女優アマンダは、ファンだと声を掛けてきたハロルドが脚本家と名乗ったことから、彼に脚本についての意見を求めます。2人の考えがぴったり一致したことから、アマンダはハロルドを信頼し、2人の関係は急速に親密度を増して恋へと発展していく。しかし、そこは当然、ハロルドがアマンダに自分のことを隠していることが障害になってくるという、お決まりのパターン。
女優と普通人とのラブ・ストーリィというと、つい“ノッティングヒルの恋人”を連想します。「ノッティングヒル」は女優が普通の人の生活に降りてきて恋が発展するストーリィでしたが、本作品はそれと逆に普通人が背伸びをして恋に展開するストーリィかと考えながら見始めたのですが、それは余計なことでした。

本作品は、地味で、素朴で、古典的といいたいくらいの純真なラブ・ストーリィです。そのうえ、何の装飾も、話を盛り上げるための誇張も、わざとらしい付け足しも、一切なし。これがアメリカ映画?と思うくらいです。
それだけに、主役を演じるシュリリン・フェンとジェレミー・ビーヴンの演技力が問われるところだと思うのですが、これまた何の気取りも衒いもなく、清々しいくらいの好演。エンディング・シーンも実に爽快。
稀にみる気持ちの良い映画といって、過言ではありません。地味ですけれど、まさに私好みの作品です。

なお、本作品はハロルドとアマンダの恋愛のほかに、もうひとつの要素があります。それは父と息子の相克。バス運転手で終わった父親は息子が自分を超えることを恐れる。それ故に、ハロルドが脚本に挑戦したりせずに自分と同じバス運転手であることを望みます。ハロルドにとって、アマンダとの恋は父親の枷をはずす契機となると同時に、自立してはじめて恋を成就できるものだったといえます。したがって、その面ではハロルドの自立という要素も含んだストーリィと言えます。

※本作品は、サンタ・バーバラ国際映画祭にて最優秀映画賞受賞作。
※なお、ストーリィの中で時々引き合いにだされる映画は、“
イヴの総て”“素晴らしき哉!人生”。

2004.05.12

      


  

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