スーパーヒーロー“バットマン”に登場する代表的な悪役“ジョーカー”を主役に据えたサスペンス・ドラマ。
ジョーカーは、何故“ジョーカー”となるに至ったのか、を描いた、“バットマン”以前の物語。
アーサー・フレックという不遇な状況に置かれ続けてきた人物が主人公。
コメディアンを自称しているものの全く笑いを取れず、街頭でピエロの扮装して日銭を稼いでいる。それですら人から痛めつけられることも多い日々。そのうえ妄想症の母親の介護を抱えているというどん底の生活状況。
さらにこのアーサーが酷いのは、緊張したり恐れを抱いたりする時に限って、笑いだしてしまうという障害を抱えていること。これが本当にヤバイ。
でも本人自身は心優しい人物。病気の母親を世話している様子に、それが窺えます。
しかし、運命は皮肉にもアーサーを追いこみ、狂わせていく・・・。
“バットマン”にてジョーカーは、最初から悪役人物として登場しますが、本作では決して悪人ではなく、むしろ不遇な運命に弄ばれた不幸な人物という他ありません。
そんなアーサーを稀代の悪役“ジョーカー”にならしめた、追い込んでしまったのは、ゴッサムシティという社会そのものに他ならない・・・でも、本当にそうでしょうか?
決して楽しい作品ではありません。むしろ観ていて辛くなるばかりの物語。
そして、悪人は何故“悪人”になるのか・・・普遍的な問題を描き出した社会的な作品とも言えるのではないでしょうか。
※なお、“バットマン”に続く物語であることもきちんと描かれていて、“バットマン”から離れた物語にはなっていません。
力作と言って間違いない、衝撃的なサスペンス・ドラマ。
ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した作品です。
2019.10.06
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