“イン・ハー・シューズ” ★★★
IN HER SHOES
(2005年アメリカ映画)

監督:カーティス・ハンソン
原作:ジェニファー・ウェイナー
脚本:スザンナ・グラント
出演:キャメロン・ディアス、トニ・コレット、シャーリー・マクレーン

 

これは素晴らしい映画! 借りてから観るまで1ヶ月を置いてしまいましたが、全く不明の至り。
何といっても、主役となる2人の姉妹を演じるキャメロン・ディアスとトニ・コレット、そして2人の祖母を演じるシャーリー・マクレーン、この3人の演技が素晴らしい。良質の映画らしい映画を久々に観たという気がしました。
キャメロン・ディアスという女優については、今までセックス・アピールばかりという印象を持っていたのですが、本作品を観たならその認識は改めないといけない。
それに加え、年老いたシャーリー・マクレーンの演技に味があって、実に良い。往年の人気女優としては、年老いた姿を見せるのは嫌なものではないかと思うのですが、老いてなお磨きのかかった演技を見せられると、年老いたことさえ彼女にとっては素晴らしいことと思えてきます。もう脱帽。

ストーリィは次のとおり。
トニ・コレット演じる姉のローズは、超多忙な弁護士。一方、キャメロン・ディアス演じる妹のマギーは美人でセックス・アピールも十分ですが、どんな仕事に就いてもロクに全うできず、失業して姉に頼ってばかり。
しっかり者の姉とダメな妹の構図が見えてきますが、実はそう簡単なものでないことが判ります。
ローズは自分の容姿に自身が持てず、仕事に没頭することで自分の存在意義を感じようとしている。高価な靴を沢山買い込むものの履きこなす自信もなく、ただしまい込んでいるばかり。一方、マギーはどうも文章をきちんと読めないという障害をもっているらしく根強いコンプレックスになっていて、男性に自分のセックスアピールを強調することでしか自分を支えられないでいる。
そのマギーが姉ローズの恋人をつい誘惑してしまい、その濡れ場を目撃したローズはついに怒りを爆発させ、マギーを追い出してしまう。
行き場を失ったマギーは、死んだとばかり思っていた祖母エラがマイアミの老人施設で暮していることを知り、エラを訪ねていく。

母親が早く死んで2人だけの姉妹であるローズとマギーの間の反目、喧嘩別れしてもなお忘れることの出来ない絆の深さ。そして最初にマギーが、ついにローズが長年の音信不通を越えて祖母エラと再会し、そのことによって家族の絆を改めて感じ知るという展開が素晴らしい。
ローズもマギーも、結局背伸びをして無理をしていたのである。自分の身の丈にあった生き方を漸く見つけ得たことによって、2人は各々の幸せを、そして姉妹の絆を再び手に入れることがことができるのである。題名の“イン・ハー・シューズ”というのは、自分の身に合った生き方という意味らしい。

なお、この映画で欠かせない存在は、マイアミの老人施設で暮す老人たちです。彼らそして彼女たちは、したたかな経験も知恵も持っている。彼らの存在、手出しがなければ、ローズもマギーも折角の幸せを逃がしていたかもしれない。
皆が社会の中にあって幸せに生きていくためには、老人たちの知恵を借りる必要があるんだということをいみじくも伝えている気がします。
見所が多く、見逃したらもったいない映画のひとつです。お薦め。

2006.05.04

    


  

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