第71回トニー賞(2017年)の作品賞を含む6部門を受賞したブロードウェイ、大ヒット・ミュージカルの映画化。
主演のベン・プラットは、3年半に亘る舞台でも主演したそうです。
主人公のエヴァンは孤独な高校生。シングルマザーの母親は看護師の仕事に忙しく、友達もおらず、セラピーに通い薬の処方も受けている、といった状況。
治療の一環で勇気づける手紙を自分宛てに書いているのですが、同級生で乱暴者?のコナーにその手紙を奪われてしまう。
そしてそのコナーが自殺し、そのポケットにその手紙があったことから、コナーの両親がエヴァンをコナーの親友だったと勘違いしたことから、話がややこしくなってしまう。
極めて内気な少年エヴァン、コナーの両親の喜ぶ様子に、事実ではないと否定できず、自分に親友がいたという虚構に幸せを感じてしまい、さらに嘘を重ねていくことになります。まして、コナーの妹であるゾーイにかねてから憧れの気持ちを抱いていたということもあって。
ミュージカルというと明るい場面が多いのですが、本作は違います。エヴァンをはじめとし、彼と同様にやはり孤独な思いや悩みを抱いていた生徒たちが、切々と心情を訴える、そうした場面に歌が使われています。
積極的に嘘をついたわけではない、でもそれを否定しなかったエヴァンに責任があるのは分かりますが、決して自分の為にだけ嘘をついた訳ではない。相手を慰めたいという優しい気持ちがあったことも事実です。
しかし、状況が拡散していくことに追い詰められ、ついに・・・。
主人公のエヴァンを演じるペン・プラットがお見事。
その時々の状況で変化するエヴァンの表情、姿勢が見処です。如何にも内気で臆病そうな様子から、同級生と交流ができて自信が持てたのか明るい表情になったり、と。
そして最後の、すっきりとした表情が印象的です。
エヴァンは、決して特別な生徒ではない。そこにでもいる、孤独な内心をうまく隠している多くの生徒たちの一人にすぎない、と認識すべきなのでしょう。
苦しい時は誰かに手を伸ばせばいい、きっとどこかに伸ばした手に応じてくれる人がいるはず、そういうメッセージを伝える作品です。 お薦め。
※私の好きな女優さんの一人がエイミー・アダムス。本作ではコナーの母親として出演しています。すっかり母親役が似合う年代になったのですねぇ。
2021.11.26
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