“シカゴ” ★★☆
CHICAGO
(2002年アメリカ映画)

監督:ロブ・マーシャル
出演:レニー・ゼルウィガー、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、リチャード・ギア

 

久々に見応えある映画、見応えあるミュージカルを観た、という一言に尽きます。

ストーリィはちょっと暗い。浮気相手を殺した人妻の逮捕、拘置所入りから裁判までというものですから、明るく楽しいというミュージカルの定例パターンからは大きく外れますが、それを補って余りあるのは構成の見事さでしょう。
主人公ロキシーは、実力がないにもかかわらず、歌と踊りで舞台に立つことを夢みる既婚女性。衝動的に殺人を犯して逮捕・監禁されますが、その現実の展開と対比するが如く、夢想的な世界で歌と踊りが展開されます。その夢の部分が、まさにミュージカルの世界。
レニー・ゼルウィガーとリチャード・ギア、お世辞にもミュージカル向きとは言えませんが、2人の個性なくしてこの映画が成り立たないのも事実でしょう。その分、共演のキャサリン・ゼタ=ジョーンズが見応えたっぷり。そして、拘置所の看守ママ役等を演じる脇役の俳優たちも、ミュージカル映画の出演者として遜色ありません。

レニー・ゼルウィガーは、主人公ロキシーにまさにぴったり。レニーを置いて他にロキシー役はいない、と感じる程です。今までのレニーとちょっと違う印象を受けるのは、これまで愚かしいところがあるけれど気が好くて可愛げのある女性という役柄と異なり、愚かしいながらも自己中心的な悪女という役柄故でしょう。それにも拘らず、今回のレニーにマリリン・モンローの姿を感じてしまったのは何故でしょうか。レニー故のロキシーと感じた故でしょうか。

レニー程でないにしろ、リチャード・ギアも、「悪」を「善」に置き換えてしまう手管に長ける悪徳弁護士役にぴったり。
レニーもリチャード・ギアも、悪役を演じてもどこか憎めないところがある、そんな2人の得な個性が、本作品には欠かせないものであったと思います。

それにしても、アメリカというのは、何と裁判好きな国であることでしょうか。そしてまた、開き直るかのように済んだことは済んだこととして肯定してしまうその土壌。
考えれば考える程、この映画には見どころが沢山見つかります。映画ファン、とくにミュージカル・ファンには見逃せない作品です。

 ※アカデミー最優秀作品賞、最優秀助演女優賞等受賞。

2003.11.15

    


  

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