キャサリン・パターソン原作の児童向け小説を映画化した作品とのこと。
田舎町の貧しい家庭に育つ少年ジェスが主人公。
家は貧しく索莫としていて、おまけに女ばかりの子供5人の中でただ一人の男。学校ではいじめられ、家では父親にあれこれ用事をいいつけられ、絵を描くことだけがジェスのただひとつの楽しみ。
そんなある日、風変わりな少女レスリーが転校してきます。そのレスリーの家はなんとジェスの隣家。
そんなレスリーに引っ張られ、野原や森の中を駆け回るうち、ジェスの前にはそれまで見たこともない世界が広がっていく。
小川を越えた先にある森の中、レスリーとジェスはその中で想像をめぐらし、空想上の王国“テラビシア”を作り上げます。
まるでファンタジー冒険物語のようなシーンが幾度も繰り広げられます。でもそれは、あくまで2人が描き出した空想上の出来事なのです。
風が吹き、木々がざわめくその中で、レスリーは生き生きと目を輝かせ、ジェスもまた次第に少年らしい表情を見せるようになっていきます。
しかし、そんな夢物語がいつまでも続かないのは、世の習い、そして物語の決め事。
素直に泣けないからこそ苦しい。またそこに至ってジェスだけでなくレスリーもまた孤独な少女だったことが明らかにされます。
幸福な時間はほんの短い間。でもその後の苦しみを経験してジェスは自立し、再び“テラビシア”の夢を繰り広げていきます。
ファンタジーであってファンタジー物語ではない、少年と少女の成長物語。
ファンタジーな冒険場面が楽しいのはもちろんのことですが、それよりもレスリーとジェスの、目や表情の輝きが忘れ難い。
とくにレスリー役のアンナソフィア・ロブがきらきら輝いていて、素敵です。
地味な作品ですけれど、ジェスとレスリーだけに限らず、登場する少年、少女たちの心の内を真摯に描き出しているところに好感がもてる映画。
最後、新しい橋を渡って再びテラビシアの王国に見えるシーン、爽快です。
2008.02.02
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