イアン・マキューアン「贖罪」の映画化。
映画の評判を聞いて原作を読んでみたいと思っているもののなかなか果せず、まずは映画の方を先に観たという次第。
ストーリィの始まりは、1935年のイングランド、政府官僚ジャック・タリスの屋敷。
タリス家の妹娘ブライトニーは、家政婦の息子でケンブリッジ大学に通うロビーに好意を寄せていた。しかし、真剣に愛し合っていたのはロビーと姉娘のセシーリア(シー)。
13歳という幼さからロビーと姉の場面を誤解してしまい、さらに嫉妬から、たまたま屋敷内で起きた従妹ローラの強姦事件の犯人をロビーと偽証してしまう。
その結果、医師を目指していたロビーは逮捕・刑務所行きとなり、セシーリアはロビーを信じてその帰りを待つが・・・・。
少女の衝動的な嘘がどんなに人々の心を傷つけ、自分自身もまた重荷を背負って一生苦しみ続けることになろうとは、当時のブライトニーが思いもしなかったこと。
本作品は、彼女の贖罪の気持ちを描いたストーリィ。
とにかくお見事という他ない、質の高い作品です。
登場人物でただ一人、ブライトニー役だけ少女時代、看護婦時代、老境に達した作家と、3人の女優が演じ分けています。
それがブライトニーの、心の内の変化を余さず描くのに適っています。
そしてその最後を飾るヴァネッサ・レッドグレーヴの切々とした語りに、どんなに悔いと贖罪の気持ちが籠められていることか。
その語りの中に、一番悲劇的な人物はブライトニーではなかったかと、最後の最後まで贖罪の気持ちを持ち続けた彼女の悲しみ・苦しみがしみじみと伝わってきます。
名作といって間違いない作品。
2009.01.12
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