“カッスル夫妻” 
The Story of Vernon and Irene Castle
(1939年アメリカ映画 RKO)

監督:H・C・ポッター 
出演:フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャース

 

アステア・ファンの方から頂いたビデオで観た作品。テレビのロードショーの録画でした。吹替え付。
本作品は、フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのコンビによるミュージカルの最後となった作品。後に“ブロードウェイのバークレー夫妻”で2人は再び共演しますが、それは10年後のこと。したがって、とりあえず本作品にて2人のコンビは終焉したということになります。
その原因は2人のコンビによるミュージカルの興行収益が低下してきたということにあるようですが、2人のコンビでこれだけ多くのミュージカル作品を生み出してくれば、陳腐化、或いは飽きがきても仕方ないところ。元々、RKOは弱小映画会社だっただけに、2人の作品の脇役はいつも同じ顔ぶれ、ということが多くありました。どんな素晴らしいことも永遠には続かないということです。
しかし、2人の最後を飾る作品としてはあまりに不適切、という感じがします。物語は、実在したヴァーノン&アイリーン・キャッスル夫妻の芸能活動を映画化したもの。楽しいミュージカルとはまるで異なり、シリアスなドラマになっています。
このキャッスル夫妻というのは、ダンスの魅力を高め、大スターとして一斉風靡した存在らしい。最初は夫婦でダンスを踊るというアイデアが理解されず、我慢の時期が続きます。それが花開いたのはパリで、人気沸騰すると、あらゆる商品に“キャスル”の名がついた程、とのこと。そしてアメリカへ凱旋帰国。
当然、2人のダンス・シーンも幾度か登場しますが、実際のキャスル夫妻のダンス・スタイルに束縛されたようです。これまでのアステア・ロジャースの洗練されたダンスに比べると、野暮ったいという印象すら受けます。また、ロジャースがぶりっ子ぶりを発揮しているのに対し、アステアについて年取ったなあ、という感じを覚えました。当時アステアは40歳。
なお、この映画へのキャッスル夫人の注文は多く、フレッド・アステアはともかく、ジンジャー・ロジャースへの配役には不満だったとか。彼女は製作者側にとって頭痛のタネだった、ということです。
第一次大戦勃発後、バーノン・キャッスルはイギリス空軍にパイロットとして志願し、最後は飛行機事故死します。解説の水野晴男氏が言うとおり、“グレン・ミラー物語”と同じような幕切れです。
アステア・ロジャース最後の映画なのになぁ...という思いが最後まで残る作品でした。

2001.05.06

 


 

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