ホテルはおよそいろいろな人物が集まるのでドラマになりやすい舞台であって、クラシック映画の名品には「グランドホテル」があり、私の好きな小説ではアーサー・ヘイリーの「ホテル」がある。
そのホテル、それも新年のカウンドダウンパーティを目前に控える大晦日の“ホテルアバンティ”を舞台にした多層構造によるコメディ。
数多くの人間ドラマが展開される中で狂言回しかつ主人公の一人となるのが、役所広司演じるホテル副支配人の新堂。
汚職でマスコミ取材に負われる若手代議士が逃げ込んできたり、表彰を受けるためやってきた人物が馴染みのコールガールと鉢合わせして慌てふためいたり、トラブルは登場する人間の数程も発生します。でもトラブルが多い分、ひとつひとつのドラマをあまり深くは突っ込まず流していく感じ。ちょっとしたニュース番組を眺めている気分とでも言いましょうか。
役所広司演じる副支配人の新堂は、相変わらず役所広司的。戸田恵子演じるアシスタントマネージャーとの息がピッタリ合っているところにリズム感がかもし出されていて私の好きなテンポです。
幾つも発生するトラブルを演じる俳優の顔ぶれが豪華です。でも豪華だからといって良かったというものばかりではない。
私好みで一番良かったのは、新堂が離婚した前の妻と偶然に再会してからの一連の流れ。元妻に今の自分を反射的に取り繕うとする新堂、それが判っていて即座に告げられない元妻の戸惑い。元妻を演じる原田美枝子の演技が地味ですけれど、味わい深く実に秀逸でした。
何度追い出されてもめげずホテルに繰返し入り込んでくるコールガールを演じるのが篠原涼子。彼女も良かったなァ。
その一方で完全に浮いていたのが川平慈英。率直に言ってあの過剰で誇張度の強い演技は邪魔だった。松たか子もその次に浮いていたと感じました。
2006.11.05
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