“仕掛人藤枝梅安” ★★ 監督:河毛俊作 |
何故今ごろ池波正太郎作品の映画化?と思ったのですが、生誕 100年記念とか。池波正太郎さんの代表的なシリーズとしては、“鬼平犯科帳”“剣客商売”とありますが、長いシリーズであるからこそ一部の映画化はかえって物足りなさを際立たせてしまう。その点、上記2シリーズに比べ作品数の少ない“仕掛人藤枝梅安”の方が映画化しやすかったのではないかと思います。 “仕掛人”=殺し屋。“蔓、元締め”と呼ばれる仲介者から依頼と代金を受けて殺しを行う。 池波さん自身、殺し屋というストーリィのため気分を乗せることが難しく、そのため作品数が少なくならざるを得なかったと述べていますが、そうした気持ちを反映しているのか、本映画作品も全体的に暗い雰囲気です。 ストーリィは、梅安が料理屋「万七」の女将である<みの>の殺しを依頼されるところから始まります。 実は梅安、おみのの前の女将も依頼を受けて殺していたという経緯があって、常に反してその事情を調べずにはいられない。 すると思わぬ因縁が判明すると共に、仕掛人仲間である彦次郎への殺し依頼とも関係していることが明らかになり・・・。 “仕掛人”を知ったのはTVドラマ「必殺仕掛人」からで、元締めである音羽屋半右衛門を山村總、仕掛人である梅安を緒形拳、同西村左内を林与市、というキャストで放映。緒形拳が演じたのは、凄みと共に愛嬌のある梅安像でとても魅力的でしたが、この顔ぶれは本来の「仕掛人藤枝梅安」と異なりましたし、原作の梅安像も緒形拳像より本豊川悦司像の方が近いかな、と思います。 ストーリィは暗い基調のものですが、原作がしっかりしているので、観応えがあります。 彦次郎と二人で鍋を啜る食事シーンにも孤独な者同士が僅かに寄り添う風情がありますし、菅野美穂演じる料理屋女中のおもんとの関わりにも、仕掛人であろうと人間味を持っていることが伝わって来て、原作の持つ味わいを感じます。 2023.02.05 |