フィンランドのヘルシンキに開業したかもめ食堂。
店を開いたのは、小林聡美演じるサチエという日本人女性。おにぎりを看板メニューにフィンランドの人に日本食を味わってもらいたいと始めた庶民的な食堂(“レストラン”でなく)ですが、肝腎の客がちっとも入らない。
それでもいつかはと、諦めずに淡々と客を待ち続けるサチエですが、やってきたのは日本かぶれの青年と、訳有りな2人の日本人女性旅行者のみ。
そんなかもめ食堂にいつしか客が入り始め、ついに満席となるまでを描いたストーリィ。
特に大きなストーリィや山場がある訳でもありませんが、見ていてとても気分が良い。
その理由は、主人公があくせくせず、美味しい料理を作ること、人に美味しく食べてもらうことだけを目標にしている点にあります。
本作品のメインは、庶民的な食事にこそあります。それを反映するかのように、この映画、かもめ食堂における調理風景、出されるおかずの品々、食事シーンがとても多い。
ごく気楽に美味しいものを食べる、これこそ生活の一番の楽しみでしょう。そんな楽しさが画面から確かに伝わってくるところが本作品の魅力。
そんな淡々とした主人公像、小林聡美さんは見事にはまり役ですね。彼女の「いらっしゃい」という声が、画面から気持ち良く響いてきます。
小品と言って良い映画ですが、美味しいおかずのような味わいがこの作品にはあります。
2006.12.18
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