“Railways−49歳で電車の運転士になった男の物語− ★★
(2010年日本映画)

監督:錦織良成
脚本:錦織良成、ブラジリィー・アン・山田、小林弘利
出演:中井貴一、高島礼子、本仮屋ユイカ、奈良岡朋子、宮崎美子

 

大企業の取締役の座を目の前にしたエリートサラリーマンが、突如にして会社を退職、子供の頃からの夢だった、故郷“一畑電車”の運転手に転身するという物語。

一畑電車は島根県の出雲を走るローカル鉄道。鉄道ファン・鉄道エッセイファンなら、割と知られた鉄道なのではないでしょうか。私にしても乗車したことはありませんが、宮脇俊三さんのエッセイを通じて親しみがあります。その点からだけでも、ちと気持ちを惹かれる映画。
 インパクトやパンチが特にある訳ではありませんが、まとまり良く、気持ちの良い映画に仕上がっています。

さて、この映画作品を見て注目すべき点は何なのでしょうか? 
故郷へのUターン、故郷にひとり残した母親の看護をするため、子供の頃に抱いた夢への挑戦?
私としては、何のための人生か?という点にあるのではないかと思います。
夢を語った親友が死に、母親の死期を知る。それらのことによって初めて“死”を意識した時に、満足できる人生を自分は送ったのか?ということに主人公は思い至ったのではないか、と思うのです。
片や妻は、念願だったハーブティーの店を開き夢をかなえたと言える。それに対し自分は仕事一途に励み、ようやく上場企業の取締役という地位を手に入れるところまで来たが、役員になることが自分の目標だったのか、役員になれば自分の人生に満足することができるのか、と。

東京でいつも時間を気にして生きてきた主人公が、故郷に戻るとゆったりと時間を過ごし、運行時間が少し遅れようと乗客を手助けすることの方を優先する。そんなローカル電車ののどかさ、地方生活のゆったりと流れる時間に浸ると、一時のどかな気分になります。
ふと今の生活を別角度から眺めてみる、そんな効能のある映画だと思います。

2010.06.05

          


  

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