夏川りみのヒット曲「涙そうそう」をモチーフにして、沖縄を舞台に血の繋がらない兄妹の懸命に生きる姿を描いた感動作。
ヒット曲をモチーフにした映画と聞くと安易な作品ではないかと敬遠したくなるのですが、小林信彦さんがしきりと高く評価をしている長澤まさみ、彼女を観てみようと手に取った作品です。
母親と父親が幼い子連れで再婚したことから兄妹となった稲垣洋太郎とカオル。しかし演奏家の父親は姿をくらまし、残された母親は病死してしまう。その母親が最後の床で洋太郎に約束させたのは、独りぼっちになったカオルをどんなことがあっても守ること。そこまでがプロローグ。
高校に合格したカオルがオバァと暮らしていた島を離れ、高校中退し16歳の時から沖縄本島で働く洋太郎の元へやってくるところから本編は始まります。
妹を守ろうと懸命に頑張ってきた兄、そんな兄を心から信頼して慕ってきた妹、久し振りに再会した妹は年頃のきれいな娘になっていて、血の繋がらない兄妹であることを2人はお互いに心の底で意識している。
お約束事のようなストーリィですけれど、それを越えた瑞々しい魅力が本作品にはあります。
一時の感傷に流れるストーリィでなく、カオルが高校生になって本島にやってきて高校三年間を過ごし、さらに大学に入って一人立ちし成人式を迎えるまでという、少女が大人の女性へと成長していく年月を通して描いたところが何といっても良い。
そしてそんな揺れ動く想いを秘めたカオルを演じる長澤まさみ、彼女の頑張りも本作品の爽やかな魅力に繋がっています。
しかし、結末は切ない。そんな哀しみを抱え、越えて、残された人間はこの先も生きていかなければならない。人間とはそんな哀しさも抱えた生き物であるということを、ふと感じてしまいました。
ヒット曲をモチーフにしながら、ストーリィ中に流れたのは途中はBIGINの一曲だけ、夏川りみの「涙そうそう」は最後のタイトルロール場面だけ、というの好感が持てます。
2007.06.17
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