“箱 男 ★★
(2024年日本映画)

監督:石井岳龍
原作:安部公房
脚本:いながききよたか、石井岳龍
出演:永瀬正敏、浅野忠信、白本彩奈、佐藤浩市

  

映像化が困難と言われ続けてきた、安部公房「箱男」の映画化。

主人公である“箱男”は、ダンボール箱を頭から腰まですっぽりとかぶり、街の片隅に座り込んであたかもただの捨てられた段ボールという体を装い、その覗き窓から外の世界を見て、こちら側こそ真実の世界と信じている。
その箱男と、その箱男に成り代わろうとするニセ医者らとの攻防、といったストーリー。

流石に、見ていて何を描こうとしている作品なのか、分からず。ただ、観続けるうちに終盤、こういう物語なのではないかと何となくわかった気がします。
閉塞感のある社会から逃れ、閉塞された空間に潜む、そこは避難場所であり主人公たちにとっては開放された気分を味わえる世界なのではないか、と。
もちろん、原作はもっと様々な要素を取り込んだ作品なのだろうと思います。ただそれを全て 120分の映画の中で描くのは無理な話であり、上記の点に絞ったのではないかと思う次第です。

主要登場人物を演じる永瀬正敏、浅野忠信、佐藤浩市といった面々はベテラン俳優であり、妄想に駆られている各人物たちをしっかり演じています。
その一方で魅了されたのは、ニセ医者の元でニセ看護師=戸山葉子を新鮮に演じている白本彩奈さん。まだ22歳と若いのですが、妄想と現実の間を自由に行き来し、妄想社会と並んで現実社会も存在していることを確かに印象づけている人物像を見事に演じています。拍手喝采です。

難解な作品ですが、安部公房の作品世界に興味がある方にはお薦め。

※ちなみに、本原作を私は未読。安部公房作品は50年前、受験の終わった高三の春休みに「砂の女」「他人の顔」「燃えつきた地図」の3作を読んでいますが、「砂の女」以外はもうまるで覚えておらず。「箱男」は「燃えつきた地図」の後に書かれた作品でした。

2024.08.26

                    


  

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