ベストセラーになった小川洋子原作の「博士の愛した数式」の映画化作品です。
家政婦の仕事で息子と2人の生活を支えているシングルマザーの杏子が主人公。今回彼女が派遣された先は、初老の数学者が一人で暮らす離れの家。その数学者「博士」は交通事故で背負った障害のため、80分しか記憶をもてないという人物だった。
何人も家政婦が変わったというその博士宅の仕事、主である博士に主人公は馴染み、彼女ばかりか10歳になる息子(博士から「√」と呼ばれることになる)も博士に親しみ、擬似家族のような温かさが生まれるというストーリィ。
原作は理屈抜きに感動がこみ上げてくるという名品で、理屈抜きに惹かれるという点では本映画も同様でしたが、原作とはまた違った味わいが魅力でした。
背景となる自然の美しさ、のどかさ。そして、今過しているこの時間を共に慈しもうという雰囲気がとても素晴らしい。
原作を読んだとき、主人公の杏子にはもっとオバサンというイメージを何となく抱いていたのですが、本作品で杏子を演じる深津絵里さんは、若々しく、(24という数字の如く)潔く、そして清々しい。深津さんの魅力あっての本作品の魅力といって言い過ぎではないと思います。
理屈ぬきに自然と、数字・数式の面白さにちょっと魅せられ、そして心の底まで清々しい気持ちになる作品です。
宣伝要素も大きいでしょうが、一面の桜をバックに杏子がエプロン姿で手を広げながら博士と散歩するシーンは、忘れ難い。
2006.07.08
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