“ぼくが生きてる、ふたつの世界 ★★
(2024年日本映画)

監督:呉美保
原作:五十嵐大
脚本:港岳彦
出演:吉沢亮、忍足亜希子、今井彰人、烏丸せつこ、でんでん、ユースケ・サンタマリア

 

五十嵐大さんの自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」の映画化とのこと。

主人公である五十嵐大は、宮城県の小さな港町で、耳の聞こえない両親の一人息子として生まれる。
その幼少の頃から20歳になって一人東京へ出て働くようになるまでの、母親との関係を軸に描いた物語。

幼い頃は母親との手話による会話を自然なこととして、時に通訳するのも当然のことと思っていたが、長じるに連れ同級生の目を気にするようになり、通訳をすることが苦痛に感じられるようになる。
他の人と違うこと、普通ではないことに敏感になる年頃、誰が悪いということもなく、やむを得ないことではなかったかと感じます。

私が以前に住んでいたマンションに両親がろう者という家族4人が住んでいて、2人のお子さんの状況はどうなのだろうかと他人事ながら気になったことがありますが、この大の場合は同居している祖父母に問題はなく、家庭内においてもすでにふたつの世界があるというのはまだ幸いなことではなかったかと思います。

主演の吉沢亮さん、手話も駆使しなくてはなりませんから大変だったと思いますが、その両親を演じた忍足亜希子さん、今井彰人さんのろう者の演技が堂に入っていて素晴らしいと感じました。
なお、私は知らなかったのですが、そのお二人ともろう者の俳優さんでした。

最後、電車での母子の姿。電車を降りてから母が息子に言う、「ありがとう」という言葉が深く心に残ります。
息子も大変だったでしょうけれど、子どもを産み育ててきた母親の苦労も相当なものだった筈。
母親の背中を眺め続ける息子の姿が忘れられません。

地味ですが、とても良質の作品です。 お薦め。

2024.09.20

             


  

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