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未読小説の映画化ですが、観て良かったと思います。
離婚し息子を抱えて実家に戻り、家業の文房具屋を営んでいた里枝（安藤サクラ）は、度々客としてやってくる谷口大祐（窪田正孝）と親しくなり、やがて再婚。息子の悠人と大祐の関係も良好、新たに娘も生まれ、４人で幸せな家庭生活を送っていたのですが、大祐が林業仕事における事故で死亡。
それから一年後、大祐の一周忌に弔問にやって来た大祐の兄が、これは弟の大祐ではない、見も知らない他人だと言い出したことから、自分の夫であった人物は「谷口大祐」ではない、ということが明らかになります。
いったい、自分が人生を共にした相手は、誰だったのか・・・。
その里枝が調査を依頼したのが、離婚のとき世話になった弁護士の城戸章良（妻夫木聡）で、在日三世で日本に帰化した人物。
「Ｘ」（大祐と名乗った人物）には、本名を隠すどのような理由があったのか、戸籍交換が行われたのか、城戸弁護士は「Ｘ」の事情を確かめるため調査を始めます・・・。
そして城戸は、Ｘの切実な事情に辿り着きます。同時に、本来の谷口大祐が抱えていた苦悩にも行き当たります。
戸籍とか家族履歴とか、場合によっては厄介なものなのでしょう。それによって自分という人間が何らかの色付けをなされてしまうのなら。
しかし、自分がどういう人間であるかは、戸籍とか家族履歴と関係ない筈。それを関係あるものにしてしまう、紐づけしてしまうのは、他人の無責任な偏見でしょう。
重要なことは何だったのか、それは最後の、里枝のひと言が語っています。
そこに本ストーリィの重みがあり、本作が語る全てが凝縮されている、と言って良い。
自分は誰なのか、自分の家族に秘密は無いのか、それは城戸自身にも通じる問題だったようです。
2022.11.20
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