内澤旬子著作のページ


1967年生、神奈川県出身。文筆家、イラストレーター。2011年「身体のいいなり」にて第27回講談社エッセイ賞を受賞。

 


   

「ストーカーとの七〇〇日戦争 ★★




2019年05月
文芸春秋
(1500円+税)



2019/06/17



amazon.co.jp

著者自身のストーカー被害体験を綴った、リアルなノンフィクション。
「週刊文春」2018年5月17日号〜12月27日号連載。

ネットで出会った「A」と交際。しかし、次第にその言動に違和感を覚えたため別れを告げたところ、Aはストーカーに一転。
知人や警察等々に相談、結果Aは逮捕されたものの、示談。
しかし、その後もネット上で嫌がらせを続け、再度・・・。
結局、最初の逮捕から決着するまで 700日以上を費やしたとのこと。

なお本書では、著者である内澤さんについて感じた疑問も多くありました。
何故、Aの書き込みに応えてしまうのか。何故、Aと同じ土俵に上がってやり取りしてしまうのか。だからこそ終わらない、相手を満足させてしまっているのではないか、と思います。

その一方、弁護士を頼んでも訴訟が終わってしまえばそれまで。
また、逮捕してもらっても、すぐに釈放されてしまうのであればかえって仕返しが怖い、というのは当然のことでしょう。
すべて内澤さんが望んだどおりの結果は得られなかったにしろ、相談先の小豆警察署、結構真摯に対応してくれたのではないかと感じます。

加害者が、自分はストーカーではないと思っていること、これは大きな問題でしょう。加害者の自覚がないところ、解決の方向性も限られてしまいますし。
先進諸国では、加害者に対する<治療>はすでに常識なのだそうです。それに対して日本では、加害者の7割が治療を拒否しているとのこと。

ストーカー被害はいつ何時、誰に対して起こるか分りませんし、相手の言動が尋常ではないだけに、本当に怖い。
単に逮捕して刑罰を与えるというだけでなく、内澤さんが書いているとおり、どうしたらストーカーを治療することが出来るかという、社会的対応が必要だと気付かされます。

ストーカー被害のリアルドキュメント、そして今後の方向性を考えさせてくれる一冊です。


T部
1.別れ話/2.前科/3.島に来たA/4.被害届/5.供述調書/6.逮捕/7.検事/8.示談/9.I弁護士/10.示談交渉/11.釈放
U部
12.コンタクト/13.LINEメッセージ/14.示談違反/15.M弁護士/16.孤独な闘い/17.2ちゃんねる/18.弁護士の論法/19.護身術/20.IPアドレス割り出し/21.長い手紙/22.初めての謝罪/23.加害者心理/24.小早川先生
V部
25.イマドコサーチ/26.「臨床」の必要性/27.再逮捕/28.意見陳述・公判/29.判決/30.仮釈放/31.終わりなき闘い/32.未然に防ぐこと。そして治療に向けて
あとがき

         


     

to Top Page     to エッセィ等 Index