富坂 聰(さとし)著作のページ


1964年愛知県生。北京大学中文系に留学後、週刊誌記者等を経てフリー・ライター。抜群の取材力、豊富な人脈を活かした中国のインサイドレポートには定評あり。84年「龍の伝人たち」にて21世紀ノンフィクション大賞(現小学館ノンフィクション大賞)を受賞。

 


 

●「平成海防論−国難は海からやってくる−」● ★★




2009年12月
新潮社刊

(1400円+税)

2014年01月
文春文庫化

 

2010/01/29

 

amazon.co.jp

本書の意味を一言で表わすならば、海に囲まれた島国として海の恵みに依存しながら、その海に、またその海を通じた他国による権益侵害に対して無関心な日本国家に対する、警鐘の書、と言えるでしょう。

今や海を通じて、この日本という国の権益がどれだけ他国から侵害されつつあるか。その事実を、様々な実例、しかも近年ニュースを賑わした事件を元に具体的に語った一冊。
私自身、かねてからこれらの問題に懸念を抱いていましたので、どれも腑に落ちることばかり。
日本の守るためにどんな力を持つ必要があるかという問題と、軍備=戦争懸念という問題を、いい加減日本国家は正面から向き合って整理して考える必要があるのではないか。いや、そうしない限り、日本の権益は今度もジリジリと侵食され続けるに違いないでしょう。

かつて戦争とは、領土争いに他なりませんでした。しかし、平成時代の今や、戦争とは権益争い。それも領土のはっきりしない海洋における経済権益争いといって他なりません。
何故日本はこんなにも、自国の権益保護に無気力になってしまったのでしょうか。戦後、他国が守ってくれるだろうという安易な他人頼みに馴れきってしまったからでしょうか。
本書は、何も軍備が必要と言っている訳ではありません。自国の権益を守るためには、それなりの体制、覚悟、決然とした主張が必要ではないかと唱えているだけのことでしょう。

本書を読めばおそらく、その脅威、それに対する日本政府の姿勢の心許なさを、誰しも感じるのではないでしょうか。
是非読んで、考えていただきたい、日本の運命を語る一冊。

プロローグ−日本を映し出す"鏡"としての海/"友愛の海"という幻想/エネルギー争奪戦がもたらした自衛隊与那国島駐屯/調査捕鯨船vs.環境テロリスト、南氷洋の闘い/「海賊問題」の本当の脅威とは何か?/北朝鮮不審船との白熱の攻防/空母でアジアの海の覇権を狙う中国の野望/エピローグ

   


  

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