新城道彦著作のページ


1978年愛知県生、九州大学大学院比較社会文化学府博士後期課程単位取得退学。長崎県立大学非常勤講師、九州大学韓国研究センター助教、新潟大学大学院現代社会文化研究科助教等を経て、フェリス女学院大学国際交流学部教授。専攻は東アジア近代史。

 


 

「朝鮮半島の歴史−政争と外患の六百年− ★★   


朝鮮半島の歴史

2023年06月
新潮選書
(1750円+税)



2023/09/26



amazon.co.jp

日本と韓国の間で何かで揉める度、かつて日本が行った朝鮮侵略を何度もぶり返し非難されるように感じています。
しかし、歴史はたったひとつの要因で作られるほど単純なものではない筈。
日本の侵略について非難されることは、当然のことですが、侵略された朝鮮側にはどんな要因があったのか、それを知ってみたいと読んでみた次第です。
本書は、そんな疑問に答える格好の一冊です。
長きに亘る朝鮮の政治状況がつぶさに書かれていて、勉強になります。
もちろん、
高宗とその正妃である閔妃も登場。

日本と朝鮮が似ていた点。
それは共に鎖国主義を取り、そして王制だったこと。
一方の日本は、鎖国主義を脱して近代化を図り、そして王制といっても元々文化(天皇)と武(将軍)で二頭体制が取られていたことが大きな違い。
また、朝鮮は王制を維持していたといっても常に内部抗争が繰り広げられ、その時の王の属性により国家体制は不安定。
そこが日本と朝鮮との間に大きな差が出来た理由のようです。
また、地理的な状況もあり、
李氏朝鮮はずっと明〜清の属国という地位にあり、近代では常に他国(中国、ロシア、日本、欧米列強)の干渉に揉まれてきたようです。

日本による朝鮮併合は、日本の領地拡大が目的かとばかり思っていたのですが、本書によると、そもそもロシアの南進から日本を防衛するという観点から朝鮮を重視。日露戦争後に、日本による朝鮮の保護国化、そして朝鮮併合へと繋がっていったとのこと。
また、伊藤博文は経済的負担面から、朝鮮併合には消極的だったとのこと。本書を読んで初めて知ったことです。

歴史は正しく知ることが何より大切だと思います。
願わくば、韓国においても、脚色された歴史ではなく、客観的事実に基づく歴史を知ってほしいと願います。

※ソウル市内にある<
独立門>、清からの独立を記念した建造物だそうですが、韓国内では日本からの独立と誤解している人が多いのだそうです。

第1章 朝鮮王国の建国
1.王氏から李氏への易姓革命/2.支配基盤の整備/3.揺らぐ王権/4.熾烈な派閥争い
第2章 華夷秩序の崩壊と朝鮮の危機
1.日本の侵略/2.迫りくる女真族の脅威/3.清の侵略と朝鮮の属国化
第3章 終わりなき政争と沈みゆく王朝
1.蕩平策の功罪/2.勢道政治と相次ぐ反乱/3.大院君と閔氏の争い/4.朝鮮を開いた日本の挑発と清の勧告
第4章 清・日本・ロシアの狭間で
1.親日と親露の角逐/2.大韓帝国の成立/3.日本による韓国併合/4.抗日独立運動の諸相
第5章 朝鮮半島の分断
1.戦後の主導権争い/2.遠のく独立/3.国家樹立の理想と現実/4.朝鮮戦争の帰結

   


  

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