佐々木健一作のページ


1977年北海道札幌市生、早稲田大学卒。NHKエデュケーショナル入社、ディレクターとして「にっぽんの現場」「仕事ハッケン伝」等の番組を担当し、日本語バラエティ「みんなでにほんGO!」、哲学番組「哲子の部屋」の総合演出を手掛ける。「辞書になった男」の元となった番組「ケンボー先生と山田先生〜辞書に人生を捧げた二人の男〜」は、2013年04月にNHKプレミアムで放送され、第30回ATP賞最優秀賞(情報・バラエティ部門)を受賞。また同単行本にて14年日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。

 


 

「辞書になった男−ケンボー先生と山田先生−★★☆ 日本エッセイスト・クラブ賞


辞書になった男画像

2014年02月
文芸春秋刊

(1800円+税)

2016年08月
文春文庫化

  

2014/03/12

  

amazon.co.jp

2013年NHKBSで放映されたドキュメント番組「ケンボー先生と山田先生〜辞書に人生を捧げた二人の男〜」がATP賞最優秀賞(情報・バラエティ部門)を受賞。本書は新たに内容を付け加えての、その書籍化だそうです。
三省堂が刊行する2つの国語辞書=
「三省堂国語辞典」「新明解国語辞典」は、両方合わせて累計三千万部という国民的ベストセラーなのだそうです。
しかし、その両辞書はことごとく対照的。前者が客観的、短文、現代的であれば、後者は主観的、長文、規範的なのだという。
国語辞書というのはそう違いがあるものではないと思っていましたが、同じ出版社から刊行されている辞書だというのに、それぞれ国語辞書の両極端に坐するのだそうです。

その個性の違いは、両辞書が共に殆ど一人の編集者により制作され、その編集者の個性をそのまま表しているから、ということらしい。前者の編集者が見坊豪紀(ひでとし)=ケンボー先生、後者の編集者が山田忠雄先生なのだそうです。
その2人、元々は東京帝国大学国文科の同級生で、両辞書の前身と言える
「明解国語辞典・改訂版」は2人が力を合わせて世に送り出したベストセラー辞書だったという。しかし、あることを境に2人は決別し、以後路線を同じくすることなく別々の画期的辞書を同じ出版社から生み出した、ということだそうです。

三浦しをん「舟を編むの面白さも忘れられませんが、本書はノンフィクション。我が国における国語辞書の変遷、辞書の編纂作業、辞書の抱える問題点等々も興味尽きませんが、ケンボー先生と山田先生という2人の人物像もそれ以上に興味尽きません。
そのうえで、何故友人だった筈の2人が決別したのか、そして最後はどうなったのかは、ミステリの謎を解いていくかのようですし、最後の最後に隠された真相まで明らかにされ、極めてドラマチック。
そしてまた、本書の中で紹介される新明解国語辞典の独創的な語釈には、思わずぶっ飛んでしまいそうな驚きと、これでいいのかぁ〜という可笑しみを感じます。もっとも担当編集者たちにすれば笑って済ませられるような語釈ではないのですが。 

常日頃から言葉の使い方に気をかけ、国語辞書を引いてみることの多い方(私もその一人ですが)にとっては、面白くて堪らないノンフィクションの逸品。お薦め!です。 

はじめに−「光」と「影」/序幕−「三国」と「明解」/第1幕.「天才」と「助手」/第2幕.「水」と「油」/第3幕.「かがみ」と「文明批評」/終幕−「人」と「人」/おわりに−こ・と・ば

     


 

to Top Page      to エッセィ等 Index