西川 恵著作のページ


1947年長崎県生、東京外国語大学卒。71年毎日新聞社入社、東京本社地方部、社会部を経て外信部。82〜84年テヘラン支局、86〜93年パリ支局、96年 5月からローマ支局長。

 


   

●「エリゼ宮の食卓−その饗宴と美食外交− 」● ★★    サントリー学芸賞




1996年8月
新潮社刊
(1553円+税)

2001年6月
新潮文庫化
(552円+税)

 

2001/06/09

エリゼ宮はフランス大統領の官邸であり、国賓、公賓等を迎えての饗宴が繰り広げられる場所です。
単に「饗宴」と言っても、そこはフランス、メニューへのこだわりには格別なものがあります。フランス料理、ワインのメニュー構成は、まさに自国・食文化の誇りがなせるわざ。
本書で紹介される饗宴毎のメニューは、興味惹かれるものですが、もっと興味津々なのは、それらが細心の外交戦略、政治意図に基づいて提供されていること。
ブッシュクリントンという2人の米大統領を迎えての違い、エリザベス英女王、天皇皇后を迎えた時のメニュー、海部・宮沢・羽田・村山という各首相におけるメニューの違い。更に、ゴルバチョフ、エリツィン、コール独首相。メニュー、ワインと、その組み合わせを見ただけでその時の政治配慮が推測できるということですから、絶句する思いです。
また、エリゼ宮の厨房に働く人の半分位が、兵役に代えての勤めだと言いますから、まさしくここは政治外交の世界だという思いを強くします。
それにしても、会社帰りの空腹時に本書を読むのはツライ。独身時代、私はフランス料理をひとりで食べ歩いていた時期があるので、メニューを見るとその美味が想像できてしまうのです。
それに年代ものの最高級ワイン....う〜ん、味わってみたいものです。

二人の米国大統領/ポンパドゥール夫人からシラクまで/儀典長の憂鬱/執事長と三つのメニュー/厨房探訪/五十年目の抜栓/銀器を失敬したのは誰?/情熱とプラグマティズムの結合/昭和天皇とシャンソン/異なった日仏の「元寇の役」解釈/空飛ぶ料理人/ビールで乾杯!

  


 

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