中平邦彦著作のページ


1938年兵庫県芦屋市生、同志社大学卒。神戸新聞社勤務、論説副委員長。83年パルモア病院の同籃記念会に出席、取材を開始。

 


 

●「パルモア病院日記」● ★★★




1986年09月
新潮社刊

1990年04月
新潮文庫
(476円+税)

 

1990/05/23
1999/05/23

 

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恥ずかしい話ですが、本書を読むたび、涙が抑えきれなくなります。そのため、何度テイッシュペーパーを取りに行くため、本書を机の上に伏せねばならなかったことか。
本書の副題は「三宅廉と二万人の赤ん坊たち」というものです。文字通り、神戸市元町にあるパルモア病院の院長・三宅廉博士の、新生児医療というライフワークを追ったノンフィクションです。
医療の分野においては産科と小児科の区別があり、各々の分野の医師らが互いに牽制しあって、隙間が生じてしまう。これを「闇の谷」と言うのだそうです。そんなことでは赤ん坊を危険から救うことはできないと、三宅博士が志したのが、産婦人科と小児科を一体とする周産期医学、そして前方視医学だったそうです。
本書は、三宅博士の志が現実としたパルモア病院における、出生から15年目に親子を招いて催される同籃記念会の様子から始まります。
前半は、パルモア病院の開設まで、そして開設してからのすべてが語られていきます。まさに、耐え続け、奮闘し続けることが生活のすべてだった、と言って過言ではありません。
並大抵の感動ではありませんでした。出生とはどんなに大きなドラマだったことでしょう。それと、ここまで私を滅して公のために尽くせるものなのでしょうか。三宅博士だけでなく、創立当初のメンバーもそうです。キリスト教への篤い信仰がなくては、とても考えられないことのように思います。
そこまで情熱をかけられる仕事を持っていることに羨ましさを感じますし、同時にとても自分にはできもしない、と思います。ただ、自分の子供たちが無事に育ってきたことに、感謝せざるを得ません。
本書は、これから何時か親になろうとする人には、とくに参考になる一冊です。

 


 

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