永野健二著作のページ


1949年生、京都大学経済学部卒。日本経済新聞社入社後、証券部記者、兜クラブキャップ、編集委員として、バブル経済やバブル期の様々な経済事件を取材。その後、日経ビジネス編集長、産業部長、日経MJ編集長、名古屋支社代表、大阪本社代表、BSジャパン社長等を歴任。

 


                

「経営者-日本経済生き残りをかけた闘い- ★★


経営者

2018年05月
新潮社刊

(1700円+税)



2018/08/10



amazon.co.jp

戦後から現在まで、名だたる経営者たちについて一人ずつその本質を抉るようにして評価した一冊。

戦後、高度消費社会時代、グローバル時代、そして現在と、戦後を4つの時代に分けてその時期の経営者たちを語るという構成。
そのため一人一人の人物評伝ではありますが、時代に沿って並べることにより、そのまま戦後の日本経済社会の歴史をリアルに眺める気がします。

それぞれの経営者たちに対する評価は、かなり辛口。
筆者の賞賛を得た経営者は、
小倉昌男(ヤマト運輸)稲盛和夫(京セラ)の僅かに2人だけ、と言って良いでしょう。
でもその辛口評価は、決して場当たり的なものではなく、
“渋沢(栄一)資本主義”をしっかり軸に据えているだけに、一貫したものを感じます。
その“渋沢資本主義”とは何なのか。筆者曰く
「公益の追及が利益を生み出す資本主義」とのこと。

本書に書かれている内容はともかくとして、尊敬できる経営者とはどんな人物か。それは一企業の決算においてただ利益を上げたという人物ではなく、社会や大衆のために尽くしたこと、事業に革新を起こした、ということではないでしょうか。
どの人物も、名前を聞けばすぐ思い浮かぶ人物ばかり。読み応えたっぷり、そしてたっぷり日本社会の行く末について考えさせられる一冊です。

なお、本書に登場した人物の内、その実績を読んだことのあるものは、次の2作
・武藤山治・・・
澤野廣史「恐慌を生き抜いた男
・中山素平・・・
高杉良「小説日本興業銀行(第1~5部)」

序.日本を支えた「渋沢資本主義」/
Ⅰ.戦後日本経済のリーダーたち・・・1.武藤山治とカネボウの「滅びの遺伝子」/2.二度引退した"財界鞍馬天狗"中山素平/3.永野重雄の決断-新日鉄誕生は是か非か/4.トヨタが日本一になった日-豊田英二の時代
Ⅱ.高度消費社会の革命児たち・・・5.中内功-流通革命と「わが安売り哲学」/6.伊藤雅俊と鈴木敏文、今生の別れ/7.藤田田、「青の時代」のトリックスター/8."プラグマティスト"小倉昌男の企業家精神
Ⅲ.グローバル時代の変革者たち・・・9.ジョブズになれなかった男、出井伸之/10."最後の財界総理"奥田碩の栄光と挫折/11.土光敏夫も変えられなかった「東芝の悲劇」/12.伊夫伎一雄と「溶解する三菱グループ」/13.日立の青い鳥、花房正義の物語
Ⅳ.新しい時代の挑戦者たち・・・14.柳井正の永久革命/15.豊田章男が背負う「トヨタの未来」/16.孫正義が目指すのは企業かファンドか/17.稲盛和夫が見つけた「資本主義の静脈」

      


  

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