向田和子著作のページ


1938年東京都生、向田家の三女(長姉が向田邦子)。実践女子短期大学卒業後会社勤めや喫茶店経営を経て、78年邦子とともに東京・赤坂に惣菜・酒の店「ままや」を開店(98年03月閉店)。

 


   

●「向田邦子の恋文」● ★★




2002年7月
新潮社刊

2005年8月
新潮文庫

(362円+税)

 

2005/08/10

本書の題名は「向田邦子の恋文」ですが、収録されている題名どおりの“恋文”は僅かなものに過ぎません。
昭和38〜39年にかけての3ヶ月間あまりと、本当に短い期間。当時の邦子は34歳頃。相手は記録映画のカメラマン・N氏で、当時体調を崩して自宅療養中だったという。
当時邦子(敬称略)は脚本家として売り出したばかり。ホテルに缶詰となり、文字どおり睡眠時間を削って原稿書きに追われる日々。そんな忙しい生活の中で3日にあげず会い、夕方頃度々N氏の住居に出向いて食事の世話をし、夜遅く自分の実家に帰るというパターンの繰り返しだったらしい。
本書に収録されているのは、その間の邦子とN氏の手紙+N氏の日記。忙しい最中にあっても、いやだからこそというべきか、N氏との関係が邦子の大切なエネルギーの糧になっていたと感じられます。
この手紙と日記は昭和56年飛行機事故で邦子が死去した後、遺品を整理する途中封筒に入って見つかったものですが、そのまましまいこまれ平成13年になって初めて開封されたとのこと。
邦子という人間を客観的に捉えられるようになるまで、それだけの期間が必要だったということなのでしょう。

後半、和子の語る姉・邦子の姿には感銘を受けます。とくに「父のよそ見」「母の率直な思い」の2章。
向田邦子という人は、こういう長女であり、こういう姉だったのかと、圧倒される思いです。
こうした向田さんの姿を知ったうえでその作品を読むなら、作品から受ける感慨も随分と違うものになる気がします。

手紙と日記/姉の“秘め事”/あとがきにかえて−ひとにぎりのナンキンマメ

 


     

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