松田明子著作のページ


1966年奈良県生、立教大学文学部卒。電通にCMプランナーとして7年間勤務し、97年06月退社。大学時代からアジア全域、アラスカ、インディアン居住区など「辺境」を旅する。本書は初の著作。

 


 

●「モンゴル 食って食って考えた」● ★★




1999年07月
新潮社刊
(1400円+税)

 

1999/08/28

松田さんにとっては、今回が3度目のモンゴル行きとのこと。
注目されるのは、草原に住むモンゴルの人々の遥か北方、タイガに住む少数民族ツァータンを訪ねる旅であることです。
もっとも、本書を「旅」とか「紀行」という言葉で言い表したくない気持ちがします。旅というと、自分が属する生活を離れ、自分と異なる場所を訪れる、異なる生活を眺める、というイメージがあります。
松田さんの意図したのはそういうことではなく、モンゴルの人々の中に加わること、どっぷり浸かることではなかったかと思うのです。
その所為か、本書には、彼らの日常生活に加わって一緒に暮らそうとする楽しさに溢れています。
とくにトナカイたちと共に暮らすツァータンの日常は、極限というもので、すべてに新鮮な驚きがあります。
でも、決して楽しさばかりがあるわけではありません。時に外国人であることを突きつけられ、悔し涙にくれることも度々あります。
だからこそ、国を異にする人たちと付き合うには、謙虚さが必要だと感じられます。決して土足で上がり込むような真似をしてはいけないのです。松田さんらを迎え入れた彼らが、気持ちの優しい人たちであるだけに、殊更にその思いを強くします。
それにしても、一面に広がる草原、はるかなる山並み、そんな広い大地の中で小さなウルツに暮らすというのは、どんな気持ちがするのでしょう? 本書表紙の写真を見ながら、その思いは尽きません。

 

読書りすと【紀行】

 


 

to Top Page     to エッセィ等 Index