小泉武夫作のページ


1943年福島県の酒造家に生まれる。東京農業大学名誉教授、農学博士。専門は食文化論、発酵学、醸造学。特定非営利活動法人発酵文化推進機構理事長。
現在、琉球大学、鹿児島大学、広島大学大学院医学研究科の客員教授を務める傍ら、各地の農政アドバイザー等食に関わる様々な活動を展開し、和食の魅力を広く伝えている。

 


 

「猟師の肉は腐らない ★★


猟師の肉は腐らない画像

2014年07月
新潮社刊

(1400円+税)

2017年04月
新潮文庫化

 


2014/09/06

  


amazon.co.jp

実際の体験記?と思ったのですが、一応は小説。
食文化等を研究する学者の「
」が、かつて知り合いになった猪狩義政=通称:義っしゃんが故郷の八溝山地に戻り、山の中で猟師として暮しているという便りをもらったことから、興味を持って訪ねていく、という設定です。

タクシーでも行き着けず、行けるところまで行った後はひたすら歩いて登るのみ。そうしてやっとたどり着いた山小屋風の家で、義っしゃんは猪狩りの猟犬=
クマと一人一匹だけで住み暮していた。
電気も水道もガスもない山中の暮らし。さぞ不便かと思いきや、湧き水を小屋に引き込み、ランプは意外と明るく、そう捨てたものではないらしい。
そしてそこから繰り広げられる、山中の食生活の多彩で豊かなことといったら。初めて知る昔ながらの工夫に驚きながら主人公、義っしゃんと酒を酌み交わしながら、美味い、美味い、の連発。
そこからあとはもう読んでもらう他ないのですが、食材の豊富さ、工夫、そして山の豊かさには驚くばかりです。
猪、兎、岩魚に山女、ドジョウはまだしも、蝉の串焼きにカブト虫蛹の焙烙炒め、蜂の子の炊き込みご飯まで。お茶は自家製の薬草茶。そして調味料の代わりは多種な山草が様々に果たし、小屋内につるして燻しておけば保存も可能という具合。

昔ながらの山の生活の、リアル体験型小説。
こんなストーリィをたまに楽しめるのも、読書の魅力です。実際、そんな簡単に体験できるものではありませんから。

第一部 長閑なること、宇宙のごとし/第二部 八溝の冬

     


 

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