古波蔵保好
(こばくらやすよし)著作のページ

 


1.ステーキの焼き加減

2.骨の髄までうまい話

 


   

1.

●「ステーキの焼き加減」● ★★★




1979年7月
文化出版局刊

1983年4月
新潮文庫
(360円)

 

1885/11/12
1991/09/30

読んでいるうちに腹が減ってたまらなくなる。そして、いろいろな美味しいものが食べられて、さらに美味しいものを十分に味わえる味覚を備えていることが羨ましい、というのに尽きる。
何より、フランス料理とか専門家ぶるとか、気取ることの全くないところが良い。
普通の人が、美味しいものにただただ舌鼓を打っているという感じなのである。
読後に思うことはただひとつ、美味しいものを食べに行きたい!ということ。
なお、美味しいものを見分けるためには、常に美味しいものを食べているという訓練もまた必要なのである、と思う。

ステーキの焼き加/料理学校で習った料理はうまいか/フランス料理天国、日本/女性味覚おんち論/餅菓子を好きですか/古き良き時代の匂う洋菓子/伸ばせば伸びるカツレツの肉/明治の洋食、その味の遺産/中国料理好食的魅力/胃袋とハートを満足させる方法/海からくる風と羊/丸梅、二代の女将さん/名人の眼力/客は大事、器も大切/珈琲と求道精神/リンゴの中の謎/神通力をもつ料理人/東京の新フランス料理/男の芸/ニューヨーク、食べ物屋/アメリカの民族の味/食べ物、掘り出し物/格調高きフランス料理/野生の果物の味/史上最低の食通の名を持った店/ロアンヌへの旅/豚の足の料理について/うなぎ二点/横丁のうまいものや/思い出のハンガリア料理/ローマの由緒ある菓子店/物騒になったローマの街で/イカの黒いスミ、そのおいしさ/中国茶ガブガブ/とても堅い牛肉がステキなオカズになった/格上げされた豚肉/サンニンの香り/わたしの味覚をつくった故郷のそば

    

2.

●「骨の髄までうまい話」● ★★

 

 
1997年6月
新潮社刊

(1300円+税)

  

1997/06/23

前に読んだステーキの焼き加減がとても面白かったので、楽しみにしていた書。
思うに、池波正太郎さんの美味いもの話には別格という風格があったし、辻静雄さんの場合には専門的過ぎて正装せずには語れないといったよそ行きの感じがあった。
その点、古波蔵さんの書くエッセイには、普段着のまま楽しめるといった良さがある。
フランス料理とか沖縄料理とかの違いにこだわらず、また、高級料理からアイスクリームまでという差も何らこだわらず。
要はただ美味しいもの楽しみ、美味いからには徹底して楽しむ、という単純さが、実は何より楽しい。

以下印象に残った部分。
「秋にマツタケ、冬はトリュフ」−「下品な匂いを魅力ある匂いに変えるのが料理」とは、シェフ斎須氏の言葉。
「骨の髄までうまい話」−ローマの路地にある爺さん・婆さんのやっていた店のオーソ・ブッコは美味かったとのこと。
「山紫水明・チロルの割烹料理」−小さな町のホテルだというのに多くの人が料理を味わいに訪れるという。確かに読んでいても実に美味そう。給仕役の若い美女というのも勿論プラス材料。
「アイスクリームをなめる美女」−ローマにある創業1880年という老舗アイスクリーム店、倉庫みたいな平屋の建物という。古波蔵さんの選んだイチゴ、レモン、米のシャーベット。なんと美味そうに語ってくれることか。
「舞台を見ながらのタバコ、茶」−ロンドンの劇場にて合間にサービスされるミルクティー、ローストビーフのサンドウィッチ、そしてきゅうりのサンドウィッチ。イギリスの生活の豊かさを感じてしまうなあ。
「ローストビーフとハダカ男」−ローストビーフのでかい塊、肉汁がいっぱい、と聞けば陶然となってしまう。
「黒焦げの中から最高の肉」−アメリカは大味と言うなかれ。やっぱり本場のステーキは美味そう。
「パリ名物・うら若い美女と老紳士」−ウ〜ン、優るものなし、と言いたい程。

*秋にマツタケ、冬はトリュッフ
*骨の髄までうまい話/ローマの魚入り煮込み麺/イカのスミは悪女の味/ミラノの郷土料理/山紫水明・チロルの割烹旅館/濃艶な貴婦人の手料理/ポンペイの遺跡とナポリのピッツァ/アイスクリームをなめる美女
舞台を見ながらのタバコ、そしてお茶/ウィーンのコーヒーとケーキ
*ローストビーフとハダカ男/ズラリと十三種の生ガキ/黒焦げの中から最高の肉/ニューヨークのエレガンス/アメリカ南部の豆スープ/女性料理長の華麗な山鳩料理/待って、待って、ついにキャヴィア/摩天楼の間を昇る日の出と洒落た朝食
*カニを食べに中国参り/ペキン・ダックの昔風と今様/フカヒレ姿煮は気高い料理/中国料理人のおいしい手工芸品/「元盅土鶏麺」という名のソバ/青竹に仕込まれたスープ
*パリ名物・うら若い美女と老紳士/鷲とカナリアのふたりづれ/野ウサギ料理の傑作に出会う/野生動物の肉に感動して/パリ郊外の店で見た優雅な家族
*江戸っ子が語るソバの食べ方/日本のコーヒーがうまかった頃の意外な話/花形はアワビとスッポン/歳を経た「千花」のカウンターで

 


 

to Top Page     to エッセィ等 Index