城戸久枝著作のページ


1976年愛媛県生、徳島大学総合科学部卒。大学在学中の1997年から2年間 中国・吉林大学に国費留学。出版社勤務を経て、2005年よりフリーランスのライター。日本生まれの中国残留孤児二世という独自の立場・視点から残留孤児、二世、三世への取材活動を続け、ノンフィクションを発表。08年、中国残留孤児だった実父の半生を追った「あの戦争から遠く離れて 私につながる歴史をたどる旅」にて第39回大宅壮一ノンフィクション賞、第30回講談社ノンフィクション賞、第7回黒田清JCJ新人賞を受賞。

 


   

「黒島の女たち −特攻隊を語り継ぐこと− ★☆


黒島の女たち

2017年02月
文芸春秋刊
(1700円+税)



2017/03/18



amazon.co.jp

沖縄県八重山諸島にある小さな島、黒島が本ノンフィクションの舞台。
太平洋戦争の敗戦間近の頃、エンジントラブル等で海に不時着した特攻機の乗組員を黒島の住民が助け、本土との連絡が途絶え食料にも不足している状況下、懸命に特攻隊員たちを世話したという事実を取材したノンフィクション。

“黒島”という島のことをご存知でしょうか。私はまるで知りませんでした。地図を見て、石垣島と西表島の間にある小さな島だったのかとようやく認識した次第。
沖縄に旅行した時に石垣島の浜辺から小浜島や波照間島の島影を見た覚えはあるのですが、黒島という名前には覚えがないなァ。
その黒島の住民たちと、住民たちに助けられて生き延びた特攻隊員たちの交流には感動を覚えるばかりですが、正直いって一番強く感じたことは、“黒島”という島がそこにあった、という事実です。
戦争末期、九州の基地から飛び立った特攻機は、黒島辺りの上空を通って攻撃にむかったのだそうです。

第1・2章を読んだ後に戸惑いを覚えたのは、内容が上記の出来事から遠ざかってしまったこと。
第3・4章は、
TVドキュメンタリー「黒島を忘れない」を制作したディレクター=小林広司とその妻のがん闘病記のようになり、第5・6章は、何とか書籍にしたいという亡夫の願いを引き継いで書籍化の努力を続けたちえみ夫人の奮闘記のようになっていること。
それだけ、黒島には人を惹きつける力がある、ということを語ろうとしたものかもしれませんが、戸惑いは残ります。

プロローグ.船上にて/1.黒島の物語/2.黒島の長い一日/インターミッション:忘れられた島−/3.明るい母子家庭/4.サクラの家/インターミッション:最後の日/5.花になる/6.戦争を語り継ぐということ/エピローグ.忘れられない島

         


     

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