兼高かおる著作のページ


1962年兵庫県神戸市生、ロスアンジェルス市立大卒。「ジャパンタイムズ」のフリーライターとして活躍。58年スカンジナビア航空主催による世界早回りコンテストで、73時間 9分35秒の新記録を樹立。59〜90年までTBS系TV「兼高かおる・世界の旅」のレポーターを務め、世界 160ヵ国を巡る。その活動により菊池寛賞、芸術選奨文部大臣賞等多くの賞を受賞。91年紫綬褒章を受章。


1.私の愛する憩いの地

2.私の好きな世界の国

 


 

1.

●「私の愛する憩いの地」● ★★☆
 Life will be La vie en rose




1992年7月
新潮社刊
(1553円+税)

1995年7月
新潮文庫化

 

1992/08/09

紀行は楽しいものですが、本書については兼高さんの簡潔で平明、かつ慎み深い(兼高さんの人柄をそのまま表したような)文章にも惹かれます。
TBS“世界の旅”においても、ナレーター役の芥川隆之さんとの品の良い口調でのやりとりが忘れられません。

本書は世界 160ヵ国を訪れた兼高さんが、お気に入りの場所を紹介したエッセイ本です。したがって、それぞれの地に魅力が溢れているのも当然のことと言えるでしょう。
その中でも私が魅力に感じたのは、イギリスの田園地方。ことにスコットランドのグレンイーグルス・ホテル。何をすることもなく、格調ある静けさの中にただ自分を委ねる。なんと素敵なことでしょう。

本書に挙げられた数々の憩いの地。そこに共通するものを考えると、与えられた自然・環境を大切にしつつ自分の生活を楽しむ、という姿勢にあるのではないかと思います。

以下、表紙の裏にある要約の転記です。
北極:氷と雪の美しい世界
ミディ運河(フランス):船のホテルをお伴に旅する
シナイ山(エジプト):神秘的な聖書の世界
フロリダ・キーズ(アメリカ):ヘミングウェイゆかりの地
ペトラ(ヨルダン):馬の背にゆられて古代の神殿へ
ガラパゴス諸島イースター島(エクアドル・チリ):地球の歴史を伝える島々
オウツホールン(南アフリカ):駝鳥に乗って走る
スピッツベルゲン(ノルウェー):白夜のフィヨルド
キャンディ(スリランカ):象のパレード、ペラヘラ祭り
イスタンブール(トルコ):歴史と遺跡の宝庫
セント・アイヴス(イギリス):芸術家に愛された土地
チュニス(チュニジア):古代の歴史が燦然と輝いて
グレンイーグルス(スコットランド):静寂という音の中にひたる
ハルガ(エジプト):砂漠の真ん中にある街
マスカット(オマーン):中近東の古い都のたたずまいが残る
ノーフォーク(イギリス):英国の庭といわれる田園風景
ロフォーテン諸島(ノルウェー):世界有数の風光明媚を誇る
コロラド川(アメリカ):ロッキー山脈に源を発して/砂漠をうるおして消える
タラワ島(キリバス):コバルトの海に浮かぶ美しい島々
ラヴェンナ(イタリア):モザイク芸術の町
リパリ諸島(イタリア):恋に火がつく火山の島々
スル海(フィリピン):心うばわれる夕日の美しさ
ロックフォール(フランス):チーズのふるさと
ドナウ川(オーストリア):ワインのふるさと
ミクロネシア(ミクロネシア連邦):日本との深い関わりの中で
ミシガン(アメリカ):サクランボの世界の首都
カリブ海(ジャマイカ他):世界有数のリゾート
ライン川(スイス・ドイツ):数々の城と伝説に彩られて
世界の温泉:世界にある温泉のいろいろ

 

2.

●「私の好きな世界の国」● ★★
 From The Album of My Memories




1996年11月
新潮社刊
(1456円+税)

2000年3月
新潮文庫化

 
1997/03/17

本書あとがきによると、前著私の愛する憩いの地は「すでに海外旅行ずみの中高年の方々に更なる旅行地」を案内することがテーマだったとのこと。それに対して本書は、旅の初心者向けに諸外国の都会を案内したエッセイ本であるとのことです。

本書で紹介されている街を、兼高さんは馴染み深く楽しみ方を充分知ったように歩き廻ります。
その地で過ごす楽しみ、食の楽しみ等々。人生の楽しみとは何かと、改めて問いたくなってしまいます。後進国であっても、そこにも古くからの伝統があり、生活の喜びや楽しみがあります。それに対し、日本は何のためにこんなにまでして物質、進歩を飽きることなく求めようとするのか、疑問を呈したくなります。
オーストラリアの西部都市パースでの空の青さ、ロンドンでのすぐ近くでの楽しみ、カシュガルのウイグル人の素朴さ。心にしみ込む気がします。
それと共に、その地での食の話。これも極めて魅力的です。
兼高さんは、現地では現地のものを食べる主義と言います。それでも、さすがに古い鰊は食べられなかったとのこと。兼高さんでも食べられないものもあるのかと、可笑しい気がします。けれどもそれを無理して食べたスッタフがお腹を壊したということですから、良し悪しを見分ける眼力も流石と言うべし。

以下、腰巻きにある要約の転記です。
サンフランシスコ(アメリカ):坂の街はケーブルカーで
ヴェネツィア(イタリア):都市そのものが美術館
パース(オーストラリア):リタイア後に、お薦めの地
パ リ(フランス):花のパリは真の国際都市
マラケシュ(モロッコ):エキゾティシズムで魅了する街
サルバドル(ブラジル):人間の原点を感じさせる街
ロンドン(イギリス):安らぎを感じさせてくれる街
カシュガル(中国・ウイグル):仏教と文化の花を咲かせた地
ケープタウン(南アフリカ): 美しい山と海を持つ大都会
バーゼル(スイス):ラインの拠点ヨーロッパ内陸一の港
ストックホルム(スウェーデン):神の創られた自然の美
マニラ(フィリピン):市民は陽気でエネルギィッシュ
ニューヨーク(アメリカ):時代の動きが見えてくる街
ミュンヘン(ドイツ):努力が造り上げた輝く街
サマルカンド(ウズベキスタン):中央アジアの宝石
アムステルダム(オランダ):過酷な国土を美しく造成
ナポリ(イタリア):底無しの魅力を秘めた都市
ニューオーリンズ(アメリカ):異色文化と歴史のある街
グアム(マリアナ諸島):マゼランも寄港した島
デリー(インド):計画新首都の成果をみせる都市

    

読書りすと【紀行】

 


 

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