長谷川滋利著作のページ


1968年兵庫県生。東洋大姫路高校では甲子園に三度出場、立命館大学では関西学生野球で投手として40勝。ドラフト1位でオリックスに入団、1年目に新人王獲得。97年大リーグのアナハイム・エンジェルスに入団、その後シアトル・マリナーズに移籍。メジャーリーグ通算 517試合登板は日本人歴代一位。2006年現役引退。同年野球生活を総括する自叙伝「超一流じゃなくても成功できる」を上梓。

 


 

●「素晴らしき日本野球」● ★☆




2007年04月
新潮社刊

(1300円+税)

 

2007/05/28

 

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長谷川さんについては、大リーグへの挑戦の話を聞いた頃から関心をもって見ていました。
それまでパ・リーグの投手ということもあって長谷川さんのことはあまり知らなかったため、日本球界で格別な実績も無いのに(ごめんなさい)何故大リーグ? 日本で活躍できなくなったから?という風に最初は考えただけでした。
ところが、大リーグへの挑戦を踏まえて英会話力の研鑽も積んできた、米国での住居探し等も全て自分で交渉する方針ということを聞いて、これはちょっと違うな、と感じました。
以来、クレバーなプロスポーツ選手、というのが私の長谷川投手像です。
単に活躍の場を大リーグに移すというだけでなく、アメリカ文化を知ろう、学ぼうとする姿勢をそこに感じたからです。そしてその後の予想外の活躍(またしてもごめんなさい)にも、米国球界での身の処し方を十分に習得したからこそ、と感じられるものがありました。

そんなことで本書にも興味をもったのですが、読んでの感想はまさに私の長谷川観を裏切らないものでした。
長谷川さんならではの視点は、大リーグをビジネスとして捉え、選手の育成・トレード等についても投資効率の点から考えていること。日米野球の双方にまたがり、さらにビジネスという点にたって両国の長所短所について言及し、そのうえで日本プロ野球への提言を行っている。ビジネスモデルとしてプロ野球をどう考えるか、その視点で読むと学ぶところのとても多い書です。
技術の点で日米野球を見ると差は殆ど無くなっているという話をよく聞きますが、ビジネスとして捉えるという点ではまだ相当に差があるようです。・・・というより、日本ではまだCMの延長として捉えているだけで、ビジネスモデルとして考えるところまで進んでいないのではないか。
今般問題となった金銭問題だけでなく、ドラフト、フリーエージェント等々の問題も致し方なくやっているだけで、各球団の頭の古さ、堅さを感じるばかり。大リーグのようなビジネスレベルに達していないのは、変化への遅れというより、球団経営陣自身の甘えに過ぎない、と感じます。
長谷川さんが本書に書いたこと、それは他の選手も体感的には知っていることかもしれません。しかし、それを言葉できちんと説明できるかどうかが大きい。
「大きなビジョンをもつこと」「足元を固めること」。端的にこうした提言ができる人材、是非日本プロ野球界のために生かしていただきたいものだと思います。 

日本野球の底力/松坂君の契約を見て考えたこと/ハンカチ王子を日本で見た/ワールド・ベースボール・クラシック勝利の意味/球団経営を考える/プロ野球の構造を考える/野球のスタイルを考える/日本はメジャーリーグに飲み込まれるのか?

 


  

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