福島香織著作のページ


1967年奈良県奈良市生、大阪大学文学部卒。ジャーナリスト。大学卒業後産経新聞社に入社。大阪文化部等を経て上海・復旦大学に語学留学。2001年から産経新聞香港支局長に赴任。02年香港支局閉局に伴い中国総局(北京)に異動、08年まで常駐記者を務めた。09年退職、中国関連分野でフリーの活動を開始。

 


   

●「潜入ルポ 中国の女−エイズ売春婦から大富豪まで− ★★


中国の女画像
 
2011年02月
文芸春秋刊
(1429円+税)

2013年08月
文春文庫化

  

2011/03/22

  

amazon.co.jp

隆盛すさまじい現代中国、マスコミに写される中国人の姿も、豊かで自信にあふれたものばかり。
ところがその一方で、信じ難い、目を覆うばかりの現実が共存しているのを目にすると、その乖離の大きさに「何故なのか!?」とつぶやかざるを得ません。

本書は、新聞記者として中国赴任経験も長い福島さんが、フリージャーナリストとなってから執筆した一冊。
女性としての視点から、現代中国の底辺に生きる女性から成功者まで、そして若い世代の女性まで、幅広く取材した結果をまとめたノンフィクション。

共産党という一党独裁国家で報道規制が徹底的に行われている国だけに、恥部となる実態は中々表に現れてきませんが、多分そうだろうとは思っていたものの、21世紀の世の中でこんなことが!と思うような事実をリアルに語られると、呆然とするほかない、というのが正直な気持ちです。
冒頭の
「エイズ村の女たち」、不衛生な売血によって村民の半分がエイズ患者という文楼村。そんな村で自らエイズ患者と知り、身体の具合が悪いというのに、男の子を生まないと一人前と認められないからと子を産もうとする。一方、その亭主は今でも夜になると、重い病気で弱っている妻の上に乗ってくるという。
また、実質人身売買のようなやり方で、無理やり結婚させられる農村の若い女たち。
そして公平を守り、万遍なく女性たちを描こうとするように、共産党=国家による過酷な弾圧を受ける女性たち、成功して富豪となった女性たち、文革時代を知らず現代中国の良い面だけを享受している若い女性の姿も描かれています。

女性をターゲットにしているからこそ、底辺から頂点まで、その大きな乖離が生々しく描き出されていると言うことができると思います。
論より実態、まず実態の一部でも知ってもらえたら、というノンフィクション。とくに女性に読んでいただきたい一冊です。

エイズ村の女たち/北京で彷徨う女たち/女強人(女傑)の擡頭/文革世代と八○后と小皇帝たち

       


     

to Top Page     to エッセィ等 Index