青木冨貴子著作のページ


1948年東京都生、作家、ジャーナリスト。84年渡米、「ニューズウィーク日本版」ニューヨーク支局長を3年間務める。87年作家のピート・ハミル氏と結婚。著書多数。

 


   

「GHQと戦った女 沢田美喜 The Woman Who Fought GHQ ★★




2015年07月
新潮社刊
(1500円+税)

2018年02月
新潮文庫化



2015/08/05



amazon.co.jp

三菱財閥創始者である岩崎弥太郎の孫で3代目当主であった久弥の長女として生まれ、外交官である澤田廉三の妻となり、戦後“エリザベス・サンダース・ホーム”の創立者となった沢田美喜という人物を探究した著作。

戦後の混乱期、進駐軍米兵と日本女性との間に生れ、母親にも社会にも捨てられた混血孤児たちを救うために沢田美喜が創立した“エリザベス・サンダース・ホーム”(以下「ホーム」)、今の時代から振り返れば感動的な偉業ということになるでしょうけれど、本書の取り組み姿勢はそうした感動ドラマとは別の視点に立つもののようです。
即ち、彼女は何故ホームを創立したのか。また、彼女がホームを創立できた地盤は何処にあったのか。
本書ではそうした視点から、沢田美喜という女性の人柄、生まれ育った状況、外交官夫人としての経験、ホーム創立前後の事情、等々を順を追って語っていきます。
そのため本書を読んで抱いたのは、感動よりも合理的な興味だったと言えます。

考えさせられたことは、ホームの存在を
GHQが認めるどころかむしろ否定しようとしたという事実。
進駐軍米兵が日本女性に多くの混血児を産ませていたことは、GHQにとっては恥部というべきものであり、認めたくなかった事実であったとのこと。
都合の悪いことは隠してしまえばいいという姿勢は、何の解決も何の改善も生まない、ということを改めて考えさせられます。
そしてもうひとつ忘れ難く感じたことは、沢田美喜の子供たちがホームにどのような気持ちを抱いていたか、ということ。

戦後史のひとつを語った一冊という印象です。

プロローグ/1.鐘をつく男/2.進駐軍との孤独な戦い/3.岩崎邸の令嬢/4.女彌太郎と岩崎と戦争と/5.五番街の聖トーマス教会/6.「サワダ・ハウス」と「本郷ハウス」/7.米情報部とサンダース・ホーム/8.澤田信一の告白/9.マヨルカ島/エピローグ

         


     

to Top Page     to エッセィ等 Index