阿古智子著作のページ


1971年大阪府生。大阪外国語大学外国語学部中国語学科卒、名古屋大学国際開発研究科修士課程修了、香港大学教育学系Ph.D(博士)取得。在中国日本大使館専門調査員、姫路獨協大学助教授、学習院女子大学准教授、早稲田大学准教授を経て2013年より東京大学大学院総合文化研究科准教授。現代中国の社会変動が主な研究テーマ。

 


          

「貧者を喰らう国−中国格差社会からの警告−【増補新版】 ★★




2014年09月
新潮選書刊
(1300円+税)

 


2014/10/30

 


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中国という国、あるいは中国社会には2面がある、ひとつは経済成長著しい明るい面、もうひとつは虐げられた一部国民が虐げられたままであるという暗い面、というのが私のずっと抱えている思いです。
本書は、その後者を実証的かつ具体的詳細に語った一冊。

最近習主席が「法治国家」という言葉を盛んに使っているようですが、当然ながら西側で意味する様な法律により国を治めるという意味ではなく、共産党が国を治めるという意味であることは言うまでもありません。(中国の最高国家権力機関は全国人民代表大会であり、西欧諸国や日本におけるような三権分立はないそうです。)
ではその共産党が国を治める姿はどういうものなのかというと、国民より共産党ありき、治める側の共産党幹部は自分たちの保身・利益優先で貧しい農民たちを犠牲にしてその上に胡坐をかいている、という姿が、本書からまざまざと感じられます。

本書に描かれる中国社会の様子が、中国社会の全てではないと思いますが、こうした実態もあるという事実は誰も否定できないことでしょう。
インターネットの広がりにより(国家により統制されているとは言いつつ)、行政側の不公平や横暴な行動ぶりがすぐ情報にのって広く伝えられる。そうした状況との比較において、民衆の動きを何とか政府が抑え込もうとしている様子が窺えます。しかし、実態としてある以上、反動を永久に抑え込み続けるのはどうしても無理がある、共産党による一党独裁に限界が来ている、という気がしてなりません。
なお、現在の中国社会の揺らぎの中に、かつて中華帝国が没落・破綻したことと共通する要因はないのだろうか、ずっと関心を持っている事項です。

※内容は、政府の奨励により売血を行いエイズ患者となった農民たち、農業戸籍と非農業戸籍という事実上の身分制度から脱せられない農民たち、学歴競争のプレッシャーによりストレスを溜め込む子供たち・・・・。

1.エイズ村の慟哭/2.荒廃する農村/3.漂泊する農民工/4.社会主義市場経済の罠/5.歪んだ学歴競争/ネット民主主義の行方/7.公共圏は作れるのか

   


     

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