秋山 駿著作のページ


1930年東京都生、早稲田大学文学部仏文科卒。報知新聞社退社後、東京農工大学教授。文芸評論家。「小林英雄」にて群像新人文学賞、「人生の検証」にて伊藤整文学賞、「信長」にて野間文芸賞・毎日出版文化賞を受賞。2013年10月死去。

 


 

●「 信 長 」● ★★★       野間文芸賞・毎日出版文化賞




1996年3月
新潮社刊

1999年12月
新潮文庫化
(743円+税)

 

1996/06/25

日本の歴史を振り返ると、“英雄”と呼べる人物は数多くいます。信玄、謙信、秀吉、家康、伊達政宗等々。しかし、“天才”と呼べるのは、ただ一人、信長しか思いつきません。
また同時に、信長は唯一“革命児”と言える存在でした。
本書は、その信長について、何故天才だったのか、如何にして天才であり得たのか、その検証を試みた一冊です。
秋山さんも、信長を、日本史上唯一の革命児、新時代への明確なビジョンをもっていた珍しい好漢、ととられています。
「信長公記」「武功夜話」を辿りつつ、秋山さんは信長の行動をつぶさに検証していきますが、単にそれにとどまらず、傍らに「プルターク英雄伝」を置き、度々引き合いにするところが、本書の斬新さ、魅力です。
秋山さん曰く「魅力ある文芸批評の最高の古典は『プルターク英雄伝』である」とか。
さらにシーザーナポレオンとも比較してみる。それは意外であるけれども、至当だったのかもしれません。
それにしても、信長という人物は魅力があります。スケールという点でも、秀吉、家康という2人の天下人を遥かに凌駕していると思います。信長こそ、日本史上唯一コスモポリタンとなりうる人物だったのかもしれません。
小説中の信長は脚色が過ぎるため、真の信長を知るのに、本書はまさに格好の一冊と言えます。

 


 

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