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  「サミュエル・ピープスの日記」● ★★原題:“THE DIARY OF SAMUEL PEPYS”
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    | 第1巻・1660年
 
  
 1987年11月
 国文社刊
 (3200円+税)
 
 1988/11/24
 | 「サミュエル・ピープスの日記」のことを知ったのは、ヘレーン・ハンフ「チャリング・クロス街84番地」を読んででした。
 日記を読んでいくのは退屈な面も多い。けれどもその反面、日常の些細な事柄も書かれていて面白い面もあります。
 
 1660年は、クロムウェル革命後王制復古がなされた年であり、当時の状況がよくわかります。
 家庭生活においては、妻が、妻が、と言うこと多く、また性生活に関する言及もあるので、興味は尽きません。
 一方、当時は洗濯が大変だった様子。ピープスが寝た後、妻と女中が夜遅くまで洗濯をしていたりしています。
 本巻でピープスは、殿様の尽力により海軍書記官の職を手に入れます。人の能力より、人脈がものを言った様子です。
 
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    | 第2巻・1661年
 1988年5月国文社刊
 (3200円+税)
 1989/11/13 | ピープスという人物に親近感が増してきました。でも、格別秀でた人とか、魅力的な人物という思いは特にありません。今のところ、ごく平凡な、人間らしい人。給料が上がれば喜び、周囲から丁重に扱われれば、自分も偉くなったと喜ぶ。また、立身のための社交辞令は欠かさない。そして、伯父からの遺贈問題には極めて真剣。
 この日記の面白さは、後に公表されるなどとは本人が考えもしなかっただけに、自分自身のことを洗いざらい正直に語っている点にあります。
 
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    | 第3巻・1662年
 国文社刊
 
 1991/01/23
 | 第2巻に比べて仕事上の自信がついた様子で、恩人サニッジ卿の評価も高いと自画自賛。女中については  
  すぐ「一戦交えたい」などと言いつつも、妻と女中の折り合いが悪く、女中解雇をめぐって妻と言い合いをしたり  
  しています。その一方、年末にはきちんと貯蓄を勘定して、増えた額に満足している。
 なかなか達者な人物で、日常多岐に渡ることを日記に書いているので楽しめます。それにしても、当時のご馳走は鹿肉のパイだったのでしょうか、度々登場しています。
 
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    | 第4巻・1663年
 国文社刊  
    
 1991/11/29
 | 530頁と厚い巻ですが、面白いこともこれまでの巻で一番。新しく雇った若い女性の召使が、気立て良く、身のこなしも良くてダンスが上手、楽器も上手に演奏すると言って、かなり買いかぶっています。ピープスの個人的関心がありありと判る程。
 ところが、妻がダンス教師からダンスを習うようになり、度々ダンス教師が妻の元に出入りするようになると、今度はピープス自身が嫉妬に悩むようになります。仕事が手につかないと日記に嘆いているし、妻の不貞の有無を調べるために、ベッドの乱れ、妻がズロースをはいているかどうか、などを確かめたりしています。
 ※イギリス女性はズロースをはかないのだが、ピープスの妻はフランス女性だった為ズロースをはく習慣だったとのこと。
 女房から嫉妬される程だったかと思えば、一転逆に嫉妬に苦しめられている、第三者の立場からすればお互い様というところなのですが、それをありのままに日記に逐次書いているところが、ピープスという人間の、またこの日記の面白さです。
 
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    | 第5巻・1664年
 1989年12月国文社刊
 (5150円+税)
  
 1992/01/19
 | この巻は、浮気相手の女性たちのことが多く書かれています。仕事は極めて順調、貯蓄も充分増えている。それだけに欲求が、SEXの方に向かうのかもしれません。多情でせっかち、行動的な性格が窺えます。
 レイン嬢には良い加減飽きてきた様子。ホーリーと結婚するよう勧めたのにもかかわらずそれに従わない、おまけにすぐ妊娠したので、最早相手にしていません。一方、床屋の女中ジェインを積極的に連れ出したりしていますが、 
  結構袖にされています。
 大工ボグウェルの女房とは、亭主の家で亭主を追い出してまで戯れようとしてるのですから、かなり行動もエスカレートしています。これでは、早晩妻のエリザベスにバレて、派手な喧嘩が起きるのは間違いなし  
  というところ。
 ボグウェルの女房としては、亭主への仕事の斡旋が目当てなわけで、当時の下層階級の女達にとって、職の為にある程度旦那衆の戯れに応じるということは、自然なことだったのかもしれません。
 
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    | 第6巻・1665年
 国文社刊
 
 1992/12/13
 | この巻は、ペストの流行による心配が全体を占めていて、    
  それ以外に大した事件はありません。相続争いも一段落した様子ですし、女中達との浮気騒動も余り大きな展開は    
  ありません。海軍での仕事では着実に信頼を勝ち得ており、地位を固めている様子。
 それ程面白いという巻ではありませんでした。
 
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    | 第7巻・1666年
 国文社刊
 
 1993/10/24
 | 相変わらず、ピープスは女性関係にマメです。女優の
  ネップ夫人、海軍差配人の娘・
  ツッカー嬢。更にウェストミンスター会館のレイン嬢が登場。彼女の姉のマーティン夫人(海軍パーサーの妻)もまたピープスの愛人というから、呆れかえります。
 5月に妻と大喧嘩、9月にはロンドン大火発生。これが契機となって火災保険が誕生したようです。12月31日には毎年恒例の如く貯蓄を勘定し、増加していることに満足して一年を終えています。
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