ウィリアム・カムクワンバ著作のページ


William Kamkwamba 1987年アフリカのマラウイに生まれる。中等学校1年の時、マラウイ全土を襲った旱魃により学費を払えず退学になる。NPOの図書室で物理を独学し、廃品を利用して風力発電のできる風車を自宅の裏庭に製作、人口たった2%しか電気を使うことのできないマラウイで、家に明かりをともすことに成功。そのことが現地の新聞で報道され、2007年科学者や発明家、起業家の国際会議TEOグローバルより招聘されスピーチを行う。5年の空白の後中学校に復学し、さらに南アフリカ共和国の高校に進学、10年09月からアメリカのダートマス大学で学ぶ。

Bryan Mealer ジャーナリスト、米国テキサス生。AP通信のキンシャサ支局長としてアフリカ報道に従事した経験をもち、「エスクァイア」等の雑誌に執筆。ニューヨーク州ブルックリン在住。

 


    

●「風をつかまえた少年」● ★★
 原題:"The Boy Who Harnessed the Wind" 
 
著者:ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー 訳:田口俊樹、解説:池上彰


風をつかまえた少年画像

2009年発行

2010年11月
文芸春秋刊
(1667円+税)

2014年12月
文春文庫化

 


2010/12/23

 


amazon.co.jp

マラウイって知っていますか。私はそういう名前の国があることさえ、全く知りませんでした。
マラウイ共和国、アフリカ大陸南東部に位置し、北・北西をタンザニア、東・南でモザンビークに接している小さな国。 

本書の副題は、「14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった」というもの。
その本人であり本書の著者でもあるのが、マラウイの農村部に住む
ウィリアム・カムクワンバという少年。
本書前半では、彼が住む国がどういうところか、そして雨が降らず国民がみな飢饉に苦しんだ時の様子が描かれます。著者の一家もその例外ではなく、そのおかげで折角入った中学校も授業料が払えず彼は退学することになります、2度までも。
そんな境遇のウィリアム、初等学校に作られた図書室に毎日のように通い、本により独学で勉強に励みます。貧しさから抜け出すためにはまず電気が必要。そして計画したのが、本からヒントを得た風力発電によって電気を作り出そうということ。
そのために廃品漁りをし続けるウィリアムを、周囲の人間たちは嘲笑いますが、親友2人の協力を得て何とか発電に成功します。その時から、ウィリアムに広い可能性が開かれていく。

ウィリアムが学ぼうとするのは、家族、そしてマラウイの人々の暮らしを良くしたいと願う気持ちから。
「ぼくたちみんなが何かをつくって動かせば、マラウイを変えることもできる」というウィリアムの言葉には胸打たれます。

マラウイと日本の文化度を比べてみても意味ないこと。
それより、上記のウィリアムの言葉こそ尊い。昔の日本も、そうした思いから勉学に勤しんだ人たちが今の日本の基礎を作ったのではないでしょうか。
「何かを実現したいと思ったら、まずはトライしてみることだ」というウィリアムの言葉、現実に彼のしたことが全てを物語っています。

プロローグ/魔術の支配する村で/父さんの思い出/ぼくの相棒、カンバ/科学に目覚める/マラウイを襲った飢饉/食べものがないクリスマス/中学校に行けなくなる/待ちに待った収穫/図書室で出会った一冊の本/発電機づくりに取りかかる/電気を起こす風/トラブルと改良/迷信と戦う/教育がチャンスを与える/トライして、やり遂げる/エピローグ

 


  

to Top Page     to 海外エッセイ等 Index