キャシー・グラス著作のページ


Cathy Glass  英国で25年にわたり里親として養育を必要とする子供たちを預かってきた経験を持ち、面倒を見た子供の数は百人近いというベテラン。自分が預かった子供たちを題材にこれまで10冊以上の本を出版。その皮切りになったのが、2007年刊行の「Damaged」。

 


 

「ジョディ、傷つけられた子−里親キャシー・グラスの手記− ★★☆
 
原題:"Damaged" 




2007年発表

2013年11月
中央公論新社

(2200円+税)

   

2013/12/16

  

amazon.co.jp

英国で20年にもわたる里親経験のある著者が、尋常ではなかったと語る里子=ジョディ8歳との1年間を書き綴った衝撃のノンフィクション。
(「衝撃」という言葉をつい使ってしまいますが、よくある宣伝文句ではなく、真実かつ余りに衝撃的なものでした。)

“里子”といっても親代わりに面倒を見るという単純な状況ではなく、親の元に置いておけないという特殊な事情があるというのがこの里親・里子制度の前提にあるようです。そうした里子たちを数多く引き受けて経験豊富な著者さえ驚かせたのが、本書のジョディ。
そもそも著者が里親を引き受ける以前、僅か4ヶ月で里親が5回も変わっているという状況からして極めて異常。そして実際にジョディを引き受けて判ったことは、攻撃的な癇癪、破壊活動、自傷行為、口汚い言葉。さらに絶句したことは・・・・。
何とかジョディのためにと著者は日夜奮闘し続けますが、その結果として著者は、ジョディという少女の人格が何故こんなにも破壊された状況にあるのか、その原因に行きあたります。そしてそれは単に異常というのを飛び越えて、余りに異常、衝撃的。

子供に問題があるのは事実ですが、では何故その子供に問題があるのか。子供こそむしろ犠牲者であって、今のジョディの状況は彼女が際限もなく傷つけられたその傷跡に他ならない。その事実を知った時には思わず慟哭したくなるような思いでした。
ジョディという8歳の少女の尋常ではない行動ぶり。そして、次第に明らかになっていくその家庭状況。有り体のサスペンス小説以上に驚愕させられ、目を背けたくなりつつも引きずり込まれてしまうノンフィクション。その中身はとても文章にできるものではありません。
人間とは、どれだけタガを外してしまえるものなのか。こんな人間がのうのうと日常生活を送っていることが許されるのか。もはやこの事実の前には何の感想も不要な気がします。
現在の日本、将来の日本においてこうした状況が起きないと言えるのでしょうか。勇気を持って読んでいただきたい一冊です。

 


   

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