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Sonali Deraniyagala 1964年スリランカ・コロンボ生。高校卒業後にイギリスに渡り、ケンブリッジ大学で経済学を専攻し、オックスフォード大学で博士号を取得。現在はロンドン大学アジア・アフリカ研究学院(SOAS)で教えながら、米コロンビア大学国際公共政策大学院でも研究員を務め、経済発展は災害復興について研究。2013年自身の経験を綴った「波」を刊行、多くの賛辞を受けてニューヨーク・タイムズ誌が選ぶその年の10冊の一つに選ばれる。 |
「 波 」 ★★ |
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2019年01月
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2004年12月26日に起きたスマトラ沖大地震、その地震によって引き起こされた大津波により、スリランカ南東のヤーラ国立公園でクリスマス休暇を楽しんでいた著者の一家を襲います。 著者自身も押し寄せる水に呑み込まれたものの奇跡的に助かりますが、大事な家族である著者の両親、夫のスティーブ、2人の息子=ヴィクとマッリは犠牲となってしまう・・・。 どれ程の絶望の淵に突き落とされたのか、自分の身にもし起こったらと思っただけでも、その悲痛な思いを感じて苦しくなる程です。 それから時間が経っても著者の気持ちは中々癒えることはありません。何度も悲痛な思いを新たにします。 家族を失ったことを直視できず、自宅に戻らず、スリランカの実家にも戻らず、全てから耳を塞ごうとしているかのようです。 ようやくロンドンの自宅に、スリランカの実家に戻れるようになったのは、かなりの年月が経ってから。 こんな悲痛な状況に置かれても、人間は生きていかなければならないのでしょうか。 時間が経てば癒される、と言うのでしょうか。いや、そんなことは決してない筈。 大事な家族がいなくなったからといって、その家族を愛する気持ちが消えることはない、本作はそう我々に語っているように感じます。 同時にまた本作は、大事な家族が現実に存在していたこと、著者が家族を心から愛していたことを明らかな形で残しておくため、書かれるべくして書かれた一冊だと感じます。 その意味で本書は、同じような経験、同じような思いを抱えた人たちに通じる、普遍的な物語になっていると思います。 ※2011年に起きた東日本大震災にも心を馳せざるを得ません。 |