幸村しゅう(ゆきむら)作品のページ


1968年東京都生。映画助監督、介護予防デイサービス兼鍼灸治療院の経営等を経て、小説執筆を開始。2020年「私のカレーを食べてください」にて第2回「日本おいしい小説大賞」を受賞。

 


                   

「私のカレーを食べてください ★★☆   日本おいしい小説大賞


私のカレーを食べてください

2021年01月
小学館

(1600円+税)



2021/02/18



amazon.co.jp

カレーへの尽きることなき探求心を支えに、児童養護施設出身の山崎成美がカレー作りに奮闘し成長していく姿を描いた長編。

ストーリィは、高校卒業=養護施設から巣立つところから始まります。
忘れ難い思い出からカレーに魅了された成美の、カレーへの執心ぶりが凄い。なにしろカレーの味試しのため、一日三食カレーだというのですから。
その成美、偶然入った喫茶店でこれまで出会ったことがない、と言うくらい美味なカレーに出会います。
その幸運から、成美は美味しいカレー作りに邁進していくのですが、好事魔多し。絶頂から奈落へと突き落とされます。それから成美は・・・。

美味しいカレーとは? 次々と繰り出されるカレーのメニューが実に美味しそうで、ついつい食欲をかき立てられます。
それだけでも充分楽しいと思う処ですが、施設育ちで頼るべき人も持たない成美が「美味しいカレーを作りたい」という一念だけで奮闘し続ける姿に胸熱くなります。

一方、成美を温かくあるいは辛く見守り、深く成美のことを考えてくれる人々も現れます。
しかし、そうした人たちの心を成美はそのまま受け留めることはできない・・・迷惑をかけていないかというやはり施設育ちのコンプレックスがあるから。
そんな成美と相手との思いのすれ違いが、とても切ない。

「私のカレーを食べてください」という言葉を成美が口にするまでにどれだけのドラマがあることか。
でもそれらは結局、成美が本格的に人生の道を歩み出すまでの助走期間での試練に過ぎないと言うべきなのでしょう。

とにかく読み始めると夢中になってしまい、降りる駅を乗り過ごしそうになってしまいます、それくらい面白い。
成美の奮闘〜学び〜挫折〜再出発という熱い成長ストーリィ。読めば文句なしに面白い筈。 是非お薦め!


1.先生のカレーライス/2.ハングリーな部屋でスパイスを学ぶ/3.面と向かって、カレー臭いと言われれば/4.謎めいた店名と猫との関係性/5.カレー屋の企業秘密/6.カヲタって、ご存じですか?/7.俺の昼メシ/8.私にはカレーしかありません/9.カツカレーを愛する、すべての者たちに告ぐ/10.私が恋に落ちたカレー/11.仕事をしてはいけないんですか/12.トロ子の手紙/13.まかないに悩んだ結果/14.この店は禁煙です/15.ゾンビ食堂/16.カラスのご馳走/17.私のカレーを食べてください
【巻末特別付録】 スパイス料理研究家 印度カリー子 特性特製レシピ

        


   

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