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「繕い屋の娘カヤ」 ★★ | |
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主人公のカヤは10歳。 父親は戦争に連れ出され、母親は仕事に出て行ったまま戻らず。それ以来カヤは、父親の残した職人道具を使い、見よう見真似で繕い屋(直し屋)をして賃金を稼ぎ、両親がいつか戻ってくることを望みながら、一人で暮らしてきました。 ある日、神社へ出かけたカヤは、大きな音と共に突然、台座から狛犬が転げ落ちて来るのを目撃します。 そのミスマル、狛犬が台座から転げ落ちるなんて神様に何か変事が起きているに違いない、と。 そしてカヤはミスマルに誘われ、神様である一宮(いっく)様の危機を救うため、一緒に<祝いの森>へと分け入っていきます。 次々とカヤ、ミスマルの前に化け物たちが立ち塞がります。その難事を切り抜け、一人と一匹は神様の危機を救うことができるのか・・・。 児童向け、ファンタジーな冒険ストーリィ。 口は悪いながらもミスマルとカヤのコンビが嬉しい。何といってもずっと一人きりだったカヤにとっては、やっと出来た、行動を共にする友人なのですから。 危険な試練が次々と2人を見舞います。でも最後にすべてが明らかにされた時、その底辺には皆の優しさがあった、というところにとても温かさがあって、嬉しき哉。 本書、作者が挿絵も描くというスタイルの児童文学を復活させたいという試みから生まれた作品とのこと。 物語と絵、どちらが先か?と思うぐらい、物語と絵がしっくり絡み合っていて素晴らしい味わいです。章ごとにイラストの色が変わるという趣向もお見事。 ずっと大切に持っていたい、と感じる一冊です。お薦め。 ※装丁は珍しいコデックス装。本の開きが良すぎて、驚き。 1.はじまりの鈴/2.お前のせいだ/3.森の子守唄/4.一ノ関 霧のシトリ谷/5.二ノ関 モユルガ原の牛鬼/6.三ノ関 ツナグ岩/7.四ノ関 トロミノ丘の悪夢/8.約束/9.半神半人のウラ・ルカ/10.森の神話 |