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1.高く翔べ 2.虎と兎 3.華の蔦重 |
1. | |
「高く翔べ−快商・紀伊國屋文左衛門−」 ★☆ |
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江戸時代、元禄期にあって伝説的で謎の多い紀伊國屋文左衛門の生涯を描いた長編とあって、興味を感じて読んだ次第。 紀州の農家で次男坊に生まれた文吉は、紆余曲折があって江戸に出、才覚と度胸、そして幸運もあって成功し、材木司・紀伊國屋を開業し文左衛門と名乗ります。 紀州から大量の蜜柑を仕入れて江戸に送り、紀州の蜜柑農家、江戸の大衆双方から歓迎されて名を挙げたこと機にして、紀伊國屋の隆盛は始まります。。 そして、お側用人=柳沢吉保、勘定奉行=荻原重秀の知己を得、寛永寺普請の入札に成功し、大商人へとのし上がっていく。 しかし、材木問屋の隆盛は長く続かず、家宣の将軍就任によって新井白石が政策の実権を握っことによって時代は変わっていき、文左衛門は紀伊國屋の閉店を決断する・・・。 吉原での豪遊が世間をにぎわせた紀伊國屋が何故一代で終わってしまったのか、その経緯を本作は描き出します。 世の人のためになる大きなことをやりたい、というのが文左衛門の志。 本作の読み処は当然にしてその紀伊國屋文左衛門という人物にある筈で、その魅力が描かれている訳ですが、残念ながらすっかり魅了されるという処まで至らないまま、読み終えたという思いです。 それでも、フィクションではありますが、紀伊國屋文左衛門の生涯を読めたことは満足です。 1.身を立てん/2.迷いの代償/3.紀伊國屋/4.奮闘、敢闘/5.次の一歩は/6.濁りの真実/7.華と泥/8.寛永寺/9.潮目/10.大地/11.別所武兵衛/12.さくらの道 |
2. | |
「虎と兎」 ★☆ |
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白虎隊の生き残り=三村虎太郎、15歳。 縁あって、米国で茶栽培の事業を興したいというプロイセン商人のスネルに誘われ、米国に渡る。 そこで開いた“ワカマツ・コロニー”で、倒れていた先住民少女=ルル(兎の意)、11歳を救う。 カスター中佐(第七騎兵隊連隊長)、その依頼を受けたピンカートン探偵社のエージェントに追われているというルルを、出身部族であるシャイアンの処に送り届けるため、虎太郎はルルと一緒に遥かなる西部へ向けて旅立ちます。 虎太郎の武器は、初伝免許を受けた“太子流”剣術の腕前と、会津若松藩の御留武術であった“御式内”。 しかし、その旅は、容赦なく襲ってくるピンカートン探偵社のエージェントとの闘い続けとなった。 過去の時代の話ですが、何やらSF冒険ファンタジー、という雰囲気がありますね。 虎太郎とルル、良いコンビです。上記要素に加え、ロード・ノベルといった楽しさもあります。 ※なお、何故カスター将軍が登場?と思ったのですが、そうか、第七騎兵隊全滅の歴史へと繋がっていくのですね。 1.白虎の魂/2.シャイアンの娘/3.旅立ち/4.モドック戦争/5.ウィリアム・ボニー/6.アドビ・ウォールズ/7.聖地パハサパ/8.リトル・ビッグ・ホーン川の決戦/エピローグ.人と人 |
3. | |
「華の蔦重」 ★★ |
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江戸時代の絵師、戯作者を主人公とした時代小説を読むと、必ずと言って良い程登場してくるのが、当時の版元(出版業)であった蔦屋重三郎。 といってこれまで読んだ小説では、常に脇役。本作ではその蔦屋重三郎自身を主人公にしているとあって、喜んで飛びついた次第です(※来年のNHK大河ドラマも蔦屋重三郎が主人公)。 貸本屋から版元をめざし、世の中に楽しい気持ちを振り撒きたいと、次々と絵師や戯作者たちとの知己を広げ、さらに新人絵師や戯作者を見い出し、育て上げていく展開は、まさに爽快な快男児の一生という雰囲気です。 そうした中、元吉原の女郎で年季奉公明けに重三郎の元へ押しかけ女房してくる浮雲、改めお甲も、本作において無くてはならない存在です。 どんな人間であれ、巧くいくとついつい調子に乗るもの。そんな時に庶民感覚から諫めてくれる女房のお甲は、真に善きパートナーと感じます。 北尾重政や朋誠堂喜三二から始まり、大田南畝や恋川春町との交流、そして喜多川歌麿、葛飾北斎、東洲斎写楽、山東京伝、曲亭馬琴らを見い出し、売り出していく手腕の冴えは、面白くてなりません。 蔦屋重三郎に興味を抱いていた方には、是非お薦めしたい一冊。 序章.吉原、燃える/1.ここから、始める/2.版元に、なる/3.荒波を、渡る/4.世と人を、思う/終章.鐘が、鳴る |