吉川永青
(ながはる)作品のページ


1986年東京都生、横浜国立大学経営学部卒。2010年「我が糸は誰を操る」にて第5回小説現代長編新人賞奨励賞を受賞、同作を改題した「戯史三國志 我が糸は誰を操る」にて作家デビュー。16年「闘鬼 斎藤一」にて第4回野村胡堂文学賞を受賞。


1.高く翔べ 

2.虎と兎 

  


       

1.

「高く翔べ−快商・紀伊國屋文左衛門− ★☆   


高く翔べ

2022年05月
中央公論新社

(1900円+税)



2022/06/04



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江戸時代、元禄期にあって伝説的で謎の多い紀伊國屋文左衛門の生涯を描いた長編とあって、興味を感じて読んだ次第。

紀州の農家で次男坊に生まれた文吉は、紆余曲折があって江戸に出、才覚と度胸、そして幸運もあって成功し、材木司・紀伊國屋を開業し文左衛門と名乗ります。
紀州から大量の
蜜柑を仕入れて江戸に送り、紀州の蜜柑農家、江戸の大衆双方から歓迎されて名を挙げたこと機にして、紀伊國屋の隆盛は始まります。。
そして、お側用人=
柳沢吉保、勘定奉行=荻原重秀の知己を得、寛永寺普請の入札に成功し、大商人へとのし上がっていく。
しかし、材木問屋の隆盛は長く続かず、家宣の将軍就任によって
新井白石が政策の実権を握っことによって時代は変わっていき、文左衛門は紀伊國屋の閉店を決断する・・・。

吉原での豪遊が世間をにぎわせた紀伊國屋が何故一代で終わってしまったのか、その経緯を本作は描き出します。
世の人のためになる大きなことをやりたい、というのが文左衛門の志。
本作の読み処は当然にしてその紀伊國屋文左衛門という人物にある筈で、その魅力が描かれている訳ですが、残念ながらすっかり魅了されるという処まで至らないまま、読み終えたという思いです。

それでも、フィクションではありますが、紀伊國屋文左衛門の生涯を読めたことは満足です。

 
1.身を立てん/2.迷いの代償/3.紀伊國屋/4.奮闘、敢闘/5.次の一歩は/6.濁りの真実/7.華と泥/8.寛永寺/9.潮目/10.大地/11.別所武兵衛/12.さくらの道

        

2.

「虎と兎 ★☆   


虎と兎

2024年03月
朝日新聞出版

(1900円+税)



2024/03/29



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白虎隊の生き残り=三村虎太郎、15歳
縁あって、米国で茶栽培の事業を興したいというプロイセン商人のスネルに誘われ、米国に渡る。
そこで開いた
“ワカマツ・コロニー”で、倒れていた先住民少女=ルル(兎の意)、11歳を救う。

カスター中佐(第七騎兵隊連隊長)、その依頼を受けたピンカートン探偵社のエージェントに追われているというルルを、出身部族であるシャイアンの処に送り届けるため、虎太郎はルルと一緒に遥かなる西部へ向けて旅立ちます。
虎太郎の武器は、初伝免許を受けた“太子流”剣術の腕前と、会津若松藩の御留武術であった“御式内”。
しかし、その旅は、容赦なく襲ってくるピンカートン探偵社のエージェントとの闘い続けとなった。

過去の時代の話ですが、何やらSF冒険ファンタジー、という雰囲気がありますね。
虎太郎とルル、良いコンビです。上記要素に加え、ロード・ノベルといった楽しさもあります。

※なお、何故カスター将軍が登場?と思ったのですが、そうか、第七騎兵隊全滅の歴史へと繋がっていくのですね。


1.白虎の魂/2.シャイアンの娘/3.旅立ち/4.モドック戦争/5.ウィリアム・ボニー/6.アドビ・ウォールズ/7.聖地パハサパ/8.リトル・ビッグ・ホーン川の決戦/エピローグ.人と人

        


  

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