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「いつか深い穴に落ちるまで」 ★★ 文藝賞 |
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2024年12月
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日本とブラジルを繋ぐ、地球を貫くトンネル掘削計画。 計画されたのは戦後すぐ、立案者は運輸省の若手官僚だった山本虚子晴。 理由はといえば、「だって。近道じゃありませんか」と単純。 そして、「底のない穴を掘る」という秘密プロジェクトが、戦後から始まり長きにわたって密かに続けられます。 言うまでもなく、あり得よう筈もない、ホラ話。 そんなホラ話ストーリィの主人公となるのは、本プロジェクトに参画する建設会社の子会社に入社した広報係の鈴木一夫。 陽の目に当たることもなく、計画の実現可否もはっきりわからないまま、主人公は恋愛や結婚もすることなく、この仕事をし続けます。 虚しい・・・・、そりゃそうでしょう、ホラ話のような計画なのですから。 しかし、遂に計画は完成? そして鈴木一夫が迎えた運命は? 馬鹿らしいホラ話と思いつつも、ここまで突き抜けたようなホラ話になると、痛快にして壮大、それ以上の言葉はなし。 最後、鈴木一夫が迎えた結末は、悲運と言うべきか、阿呆らしさの象徴と言ったら良いのか。 呆然とするばかりですが、この途方もない結末こそ、ホラ話の極みにして見処、何とも言えない読後感がいつまでも残ります。 |