山本 渚作品のページ


1979年徳島県生。徳島県立城北高校在学中図書委員。香川医科大学看護学科卒。主婦業の傍ら書いた「吉野北高校図書委員会」にて第3回ダ・ヴィンチ文学賞・編集長特別賞を受賞し、作家デビュー。


1.
吉野北高校図書委員会

2.吉野北高校図書委員会2

3.吉野北高校図書委員会3

 


   

1.

●「吉野北高校図書委員会」● ★★☆   ダ・ヴィンチ文学賞編集長特別賞




2008年08月
ダ・ヴィンチ
MF文庫刊

(495円+税)

 

2008/09/28

 

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舞台は徳島県徳島市にある進学校、吉野北高校。
その吉野北高校の図書委員会の仲間たちを主人公にした清々しい青春ストーリィ。

先日読んだ長嶋有「ぼくは落ち着きがないでもそうでしたけれど、高校の図書委員会、何故こんなにも雰囲気が楽しそうなのでしょうか。
こんななら私も高校時代なっていれけば良かったと思うものの、いやいやこれはあくまで小説、実際そうだったとは限らない、と思うべし。
それくらい、本書に登場する図書委員会の主要メンバー、素敵なのです。カッコイイというのとは違う。仲間として集まり、お互いに仲間である関係を大切にしている、という風。そこが好いのです。
その中で、1年の時からゴールデンカップルと言われ、性格も似たもの同士と言われる川本かずら武市大地の2人がその中心になっているのは間違いない。
そんな2人が、定石のようなカップルにならず、あくまで信頼し合う仲間同士という設定が、本ストーリィの秀逸なところ。

2年で委員長の岸本一(はじめ)、副委員長の川本かずらと武市大地、書記で元不登校生の藤枝高弘、1年生で大地の彼女の上森あゆみ。そして脇役的ですけど、女生徒からキモイ人と言われている西川行夫に、司書の牧田先生。皆好きになってしまう登場人物ばかり。
高校生ともなれば、女の子が男の子を好きになり、男の子が女の子を好きになる、ということも勿論あります。でも、それ以上に仲間であることが好き、大切というのが、高校生活で何が大切かよく分かっているじゃないか、と言いたくなる程素敵なのです。

「吉野北高校図書委員会」は、前半は川本かずらが、後半は藤枝高弘が自分の気持ちを含めながら一人称で語るストーリィ。
そして「あおぞら」は、上森あゆみが彼らを語るストーリィ。
小説としては小品ですけれど、★★☆評価は私が大好きなタイプの作品だから、それに尽きます。
※なお、巻末の解説は女優の堀北真希さん。

吉野北高校図書委員会/あおぞら

   

2.

●「吉野北高校図書委員会2−委員長の初恋−」● ★★




2009年02月
ダ・ヴィンチ
MF文庫刊

(524円+税)

 

2010/01/18

 

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微笑ましい高校版青春ストーリィ、第2弾。

同じ高校生を主役にした青春作品と比較すると、とても幼い感じがする本シリーズですが、私の高校生活イメージにはしっくりときます。
今回は、皆から頼りにされている委員長=岸本一(はじめ)が、自分の進路を巡って家族の間に揉め事が起き、結局自分自身が何をしたいのか判らないと自信喪失に陥った上に、司書の牧田先生への恋心を自覚してしまい、ひどく動揺してしまうというストーリィ(「委員長の初恋」)。
何だかんだと高校生であれば当然起きるべくして起きたような悩み事であり、どうということもないのですが、それを素直に描いているところが好ましい。
そんな一を囲む図書委員会の主要なメンバーは、川本かずら、藤枝高弘等々と、前作からお馴染みの面々。
決してでしゃばらず、生徒たちを温かく見守る牧田先生の存在といい、この図書委員会の居心地良さが、何といっても本シリーズの魅力。

「希望の星」は、同じ時間を藤枝高弘の立場から、彼の悩み・思いを中心に描いた篇。
「委員長の初恋」における岸本一を、藤枝高弘の側から眺めるという面もあってまた楽しい。

委員長の初恋/希望の星

   

3.

●「吉野北高校図書委員会3−トモダチと恋ゴコロ−」● --




2009年12月
ダ・ヴィンチ
MF文庫刊

(524円+税)

  

2010/01/31

  

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主人公たちも早や3年生。図書委員会の活動も2年生の上森あゆみらに譲り、受験生としての毎日に突入していますが、中々気分は受験に集中しきれない、という日々。
そんな中、ハンドボール部の武市大地、部仲間の小嶋から川本かずらへの好意、川本に告りたいという気持ちを打ち明けられ、動揺します。今まで友達としかみていなかったかずを、初めて女の子として意識したことから。
一方の川本かずら、こちらもまた恋心を自覚して、お悩みの真っ最中。そのうえ、県内か県外かという進路の悩みまで抱え込んでしまうことに。
さて、恋心と受験生生活。藤枝高弘らも加え、彼らはそれにどう折り合いをつけていくのか、という巻。

特別なストーリィではないよなぁと思いながら、読み進んでいくと、いつの間にか彼らの素直で純真な想いに共感し、彼女や彼らへの愛おしさが込み上げてくる。
本書第3巻も、いいなぁ。仲間を大切にしたいという気持ちが溢れている、そこが本シリーズならではの魅力です。

「女のトモダチ」は、川本かずらの親友=壬生っちが主人公。上記かずらの恋ストーリィの終盤が、壬生の視点から描かれます。
各巻、別の視点から主ストーリィが改めて描かれるという構成も魅力なんですよねぇ。

さて、巻毎に1年を描き、3巻目の本書で主人公たちは3年生。
この後はどうなるのでしょうか。まだまだ主人公たちのその後を読みたいのですけど。

トモダチと恋ゴコロ/女のトモダチ

    


   

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