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「かっかどるどるどぅ」 ★★ | |
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文藝賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」は未読なので、本作が初読みです。 生きていくことにそれぞれ行き詰まりを覚えた4人、彼ら行き着いた先は、古いアパートの自部屋を開放し、困っている人に食事をふるまっている片倉吉野という女性の元。 しかし、そんな片倉吉野こそ、救いを、生きる縁を求めていた、というストーリィ。 主な登場人物は次の5人。 ・里見悦子:女優の夢を捨てきれずつましい生活を送ってきた今は、アパートからの立ち退きを迫られている。 ・平 芳江:夫が早くに死すと家に舅姑が押しかけてきた末に介護を担わされ、終わったと思ったら68歳。 ・田口理恵:大学院卒ながら就職できず、非正規雇用を転々してきた30代女性。ついスーパーで忘れ物の財布を盗んでしまう。 ・木村 保:不器用でどの仕事も務まらず、今やホームレスという20代男性。 ・片倉吉野:見知らぬ人の食事をふるまう女性。しかし、彼女もまた自分の人生で傷を深い傷を負っていた。 生きていくうえでお金や住む処が必要なのは当然ですが、それ以上に大切なのは、言葉を交わせる相手がいること、喜びや悲しみを感じ合える人の存在が必要なのだ、ということを強く感じさせられます。 それらがあればまた、人は頑張れるのではないでしょうか。 他人に食事をふるまう、簡単なことですが、そう簡単にできることでもありません。 そうした片倉吉野の行動によって、吉野の周りに人が集まり、言葉のやり取りが生まれ、一人ではないのだと感じ、励まされる。 希望を抱かされると同時に、必要なものは何かを感じさせられるストーリィです。 片倉吉野との出会いをきっかけに、彼らが前へと踏み出していくところが嬉しい。 なお、方言も交えた各自の本音語り、そして片倉吉野の東北弁による語りが、胸に深く入り込んできます。 かっかどるどるどぅ/駆け出しの神 |