若竹千佐子作品のページ


1954年岩手県遠野市生、岩手大学教育学部卒。主婦業の傍ら幼い頃からの「作家になる」という夢を持ち続け、55歳で小説講座に通い始める。8年かけて「おらおらでひとりいぐも」を執筆、2017年同作にて文藝賞を史上最年長となる63歳で受賞し作家デビュー。翌18年同作にて芥川賞を受賞。
同作は世界10ヶ国で翻訳され、22年ドイツ語版で独の著名な文学賞=リベラトゥール賞を受賞。

 


                   

「かっかどるどるどぅ ★★


かっかどるどるどぅ

2023年05月
河出書房新社

(1500円+税)



2023/07/20



amazon.co.jp

文藝賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」は未読なので、本作が初読みです。

生きていくことにそれぞれ行き詰まりを覚えた4人、彼ら行き着いた先は、古いアパートの自部屋を開放し、困っている人に食事をふるまっている
片倉吉野という女性の元。
しかし、そんな片倉吉野こそ、救いを、生きる縁を求めていた、というストーリィ。

主な登場人物は次の5人。
里見悦子:女優の夢を捨てきれずつましい生活を送ってきた今は、アパートからの立ち退きを迫られている。
平 芳江:夫が早くに死すと家に舅姑が押しかけてきた末に介護を担わされ、終わったと思ったら68歳。
田口理恵:大学院卒ながら就職できず、非正規雇用を転々してきた30代女性。ついスーパーで忘れ物の財布を盗んでしまう。
木村 保:不器用でどの仕事も務まらず、今やホームレスという20代男性。
片倉吉野:見知らぬ人の食事をふるまう女性。しかし、彼女もまた自分の人生で傷を深い傷を負っていた。

生きていくうえでお金や住む処が必要なのは当然ですが、それ以上に大切なのは、言葉を交わせる相手がいること、喜びや悲しみを感じ合える人の存在が必要なのだ、ということを強く感じさせられます。
それらがあればまた、人は頑張れるのではないでしょうか。

他人に食事をふるまう、簡単なことですが、そう簡単にできることでもありません。
そうした片倉吉野の行動によって、吉野の周りに人が集まり、言葉のやり取りが生まれ、一人ではないのだと感じ、励まされる。

希望を抱かされると同時に、必要なものは何かを感じさせられるストーリィです。
片倉吉野との出会いをきっかけに、彼らが前へと踏み出していくところが嬉しい。
なお、方言も交えた各自の本音語り、そして片倉吉野の東北弁による語りが、胸に深く入り込んできます。


かっかどるどるどぅ/駆け出しの神

        


   

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