梅猫沢めろん作品のページ


1975年大阪府生。様々な職を経て文筆業。

  


     

●「ニコニコ時給 800円」● ★☆


ニコニコ時給800円

2011年07月
集英社刊

(1600円+税)

2014年07月
集英社文庫化

  


2011/08/26

  


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時給 800円で働く若者たちの姿、その働く現場を描いた連作短篇集。
う〜ん、どうなんでしょう。
一時的なバイトであれば、多少安くても我慢すればということで済むでしょうけれど、就職難故のフリーターということであれば深刻と考えるべきでしょうか。

「マンガ喫茶の悪魔」で、しょぼいマンガ喫茶に短期バイトとしてはいってきたのは、東大法科大学院修了予定、司法試験合格済という経歴のキノキダという青年。その経歴に、安月給のカザマ店長は過剰に反応。そりゃあ、無理ないかも。

「洋服のいばら姫」は、デザイナーショップで働く新人店員が主人公。そう高くはない給料で、売り上げ目標達成のためモチベーションばかり高められるというのは、キツイものがありますね。
「パチンコ屋の亡霊たち」は、友人と共同で立ち上げたIT企業から追い出され、父親からパチンコ屋を引き継いだカナモリ支配人が主人公。そう正論ばかりではスミマセンって。でもそれで通してきたサラリーマンとしては辛い。
「野菜畑のピーターパン」、自宅の空き地で低農薬野菜を栽培、販売を目論むごく普通の女性が主人公。そう易々と思い通りにはいく訳ないですよね〜。
「ネットワークの王子様」は、親の借金を引き継ぎあくせく働く女性が主人公。何か夢を持てれば幸せになれるって言ってあげたいのですけど・・・・。

時給 800円では幸せになれない、いや 800円でも幸せになりうるという問題ではなく、要は、幸せかどうかは精一杯やっている自分に満足できるかどうか、という問題ではないかと思えてきます。
なお、「マンガ喫茶の悪魔」に登場した脇役人物が、他の短篇にも顔を出します。その点がちょいとした楽しみ。

マンガ喫茶の悪魔/洋服屋のいばら姫/パチンコ屋の亡霊たち/野菜畑のピーターパン/ネットワークの王子様

 


  

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