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【作家歴】、精霊の守り人、闇の守り人、夢の守り人、虚空の旅人、神の守り人、蒼路の旅人、天と地の守り人・第1部〜第3部、流れ行く者、「守り人」のすべて、炎路を行く者、風と行く者 |
孤笛のかなた、獣の奏者1・2、獣の奏者3・4、獣の奏者・外伝、物語ること生きること、明日はいずこの空の下、鹿の王、ほの暗い永久から出でて、鹿の王水底の橋 |
「精霊の木」 ★★ | |
2019年05月
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1989年偕成社刊のデビュー作。 舞台は遠い未来、人類が移住した星のひとつであるナイラ星が舞台。 人類移住2百年祭を迎えようとする中、シンの従妹であるリシアが度々先住民の夢を見るという出来事が繰り返し起きます。 自然環境が破壊された故に百年も前に死滅したと伝えられている先住異星人ロシュナール“黄昏の民”の夢を何故リシアが繰り返し見るのか。 そこから、シンとリシアが実はロシュナールと人類の混血児子孫であること、過去に起きた出来事を夢として見るという<時の夢見師(アガー・トゥー・ナール)>の能力が目覚めたことが判明します。 そして今、<精霊の道>が現れ、過去のロシュナールたちがその道を渡って姿を現します。<精霊の木(リンガラー・ホウ)>、そして精霊たちと出会うために。 その事態に、ロシュナールたちを死滅に追い込んだ移民局の実権者コウンズは2人を抹殺し、真相を隠蔽されたままにしようと2人の後を追います。 宇宙、SFという設定は上橋さんとしては珍しいと感じますが、現代世界とは別の世界を舞台にした冒険、異民族間の対立、追跡ストーリィの中で様々な真実が明らかになっていくという物語要素は、このデビュー作から上橋作品に共通な一貫したものと感じます。 やや抽象的で理解しづらい部分もありますが、その分清新な印象です。 「精霊の守り人」と「精霊の木」、似ているようで違うもの?ですが、どこか共通するところを感じますねー。 序章.不思議な光/1.超能力、目ざめる/2.精霊の道の伝説/3.夢の語り部/4.追手からのがれて/5.闇に秘められた歴史/6.精霊の歌の秘密/7.暗号の解読/8.精霊の木/9.最後の賭け/終章.そして、未来へ |
24. | |
「香 君(こうくん)−上巻:西から来た少女、下巻:遥かな道−」 ★★★ |
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文春文庫
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上橋作品というと、読む前からワクワクします。 頁を開けると、そこには未知なる世界が広がっていて、そこでどのような冒険が繰り広げられるか、心が躍る気がするからです。 本作は、紛れもなくそうした物語の一つ。 本作の舞台は、冷害にも干害にも強く、虫も付かないという特殊な穀物<オアレ稲>のおかげで繁栄するウマール帝国と、その属国の立場にある4つの藩王国。 そして主人公は、元西カンタル藩王を祖父とし、自身は類い稀なる嗅覚を持ち“香りの声”を聞く少女アイシャ=ケルアーン。 祖父の藩王がオアレ稲の栽培を許さなかったことから民の憎しみを買い、アイシャもまた命の危機に瀕しますが、藩王国視察官であるマシュウ=カシュガに救われて生き延びます。 そして、マシュウの手配により、「香りで万象を知る」と言われる帝国の活神<香君>に仕えることとなります。 折しも、オアレ稲唯一の天敵とされる害虫が発生。虫害に対抗するため初代香君が定めた<絶対の下限>の飼料量を下回る栽培方法を試したところ好結果が得られましたが、まさかそのことが遥かに大きな災害を招くことになるとは・・・。 「飢えの雲、天を覆い、地は枯れ果て、人の口に入るものなし」という皇祖の言葉が現実化しようとするとき、アイシャ、香君オリエ、マシュウたちは究極の危機にどう立ち向かっていくのか。 上橋作品の魅力は、ストーリィが展開していく中で、自分の生き方を問うていくという姿勢が常にあるからです。 何のために生きるのか。自分の利益のためか、自分の側にいる人たちのためか。いや、広く多くの人たちに尽くす道こそ、本来の人としての在り方だというメッセージが伝わってくる物語です。 冒険物語ですから、苦難や策謀もあります。しかし、たとえ敵方の人物であろうとそこに我欲が見られません。そこに、本作を気持ち良く読め、最後は爽快な読後感に浸れる理由はそこにあります。 ひとりの少女が幾度もの試練を乗り越え、毅然として、大きく成長していく姿には、とても尊いものを感じます。 【上巻】序章.蒼い花/1.出会い/2.オリエ/3.異郷から来た者/4.オゴダの秘密 |
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